先駆者テイ・トウワが憂う、ダンス・ミュージックの現在「『便利=最高』ではない」

「”錆び付いたアンテナ”でも行けるよってこと」

ーー最近の若い音楽家で面白いと思う人はいませんか。

テイ:それがまったくいないんですよね……若い音楽家と対談するオファーが来てるんだけど、興味が持てる人がまるでいない、現場でいろんな人に会うけど、話したいと思えるような人がいませんね。でもこういう考え方するオッサンて、若い頃はクソジジイと思ってたけどね(笑)。死ねあのクソジジイ、って。僕がちょっと出始めた時に、上から目線のオヤジにエラそうに言われてさ。でもそうやって人生シフトチェンジしていくんですね。そこが面白いよね。

ーーテイさんの場合、いわゆるエレクトロニックなダンス・ミュージックの先駆者じゃないですか。

テイ:その頃はいなかったよね。

ーーロール・モデルとなるような先輩がいなかった。

テイ:違った意味でKraftwerkとかYMOとか、勝手に仰いでた人たちはいたけれども、彼らと同じ道に行かなかったのが良かった。ブラック・ミュージックの人たちの中に入っていってDJとして手に職を持ったので、それがよかったと思うんです。礎っていうと大げさですけど、ニューヨークのクラブで週に最低2回、11時から6時まで一人で回すような生活を送ることで、僕の音楽の基礎が築かれたと思う。ギリギリの生活だったけど、DJとしてあれだけ血肉化した時間を送れたことは他にないですね。

ーー今の若い人って、同じエレクトロニック・ミュージックをやる先輩たちが死ぬほど一杯いて、お手本になるような前例も死ぬほどあるわけじゃないですか。

テイ:ああ、なるほど。そういう見方は初めてだな。

ーーでもテイさんはお手本のないところから始めたから、違うジャンルのものを一杯吸収して自分の音楽を作り上げていくしかなかった。そういう違いってけっこう大きい気がします。

テイ:ああ、なるほどね。実際僕はJBしか聴いてない時期とかありましたからね。毎日JBを聴いて打ち込む。

ーーだから最初から応用力が鍛えられるというか。

テイ:なるほど。そういう見方は初めてだな……若いころは、今一番新しいエッジーなことを知らないことがカッコ悪いと思ってたけど、『LUCKY』(2013年)の時に、言いたかったことは、”錆び付いたアンテナ”でも行けるよってこと。(同作収録「Radio」の歌詞。METAFIVEの『META』にも収録。両方とも高橋幸宏がボーカルをとる)。幸宏さんにも(歌詞を)褒められたんだけど、錆びたアンテナでも必要な情報は入ってくる。若いころのアンテナはピカピカだけど、歳をとってくると経年変化して錆び付いてくる。錆び付くという言葉はいい意味では使われないけど、僕は決して悪いことじゃないと思う。むしろ錆び付かないとつまらない。錆び付いて経年変化して、それが味になっていくものもあるし、ペンキが剥がれてキレイだと思うこともあるし。そういうことがわかるようになってきましたね。

ーーそういう境地に達した人も前例がないですからね。それに若い人にとってみたら、アンテナに飛び込んでくる情報が多すぎる。自分の個性を出そうと思ったら、あの人はこれをやっている、この人はこれをやっている、と情報を丹念に選り分けなきゃならない。

テイ:道がないですよね。

ーーすごく細い道を選んでニッチなところに入り込まないと自分の居場所が作れない。そういう意味では今の若い人はすごく大変だなと思います。

テイ:自分の息子も含め、今の若い人が大変だなと思うのは、憧れづらいってこと。僕らが始めたころに憧れだったKraftwerkにしろYMOにしろ、彼らが使っている機材は最新のシンクラヴィアとか2000万円ぐらいして、買えないし触ることすらできないわけですよ。でも今の若い人は僕が使ってるのと同じ10万かそこらのMacを買って、音を作れるわけでしょ。そこですよね。憧れるってことがなかなかない。その代わり妙に馴れ馴れしく絡んでくる。

ーーTwitterでテイさんに気軽に話しかけられる時代ですからね。

テイ:“前々作が好きでした”とか、ふざけんなよっていう(爆笑)。自分なりに褒めてるつもりなんだろうけど、イラッとする。妙な世の中になってきたなと。僕らの時代は、憧れることは手が届かないことだらけだったんですよ。坂本龍一さんは僕の音楽を評価してラジオでかけてくれたけど、彼のお手伝いをしている時でさえ、気軽に話しかけるなんてもってのほかだった。そういう距離感がない気がしますね、今の若い人は。

ーーテイさんが今の若い音楽家志望者だったら、やりやすかったと思いますか。

テイ:スタート地点には立ちやすいですよね。バイトして機材揃えて……。

ーーアマチュアのホーム・レコーディングでも、プロと同等のクオリティのものを作ることは今や難しくない。

テイ:そうですよ。特にエレクトロニックな音楽はね。便利になったと思いますよ。でも便利=最高じゃないってことですよ。すべてに於いて。iPhone1台で電話もできるメールも送れる録音もできる写真も撮れる映像も見られる。音楽だって作れる。でも「最高」じゃないですよ。もちろん最高のものができる可能性はあるけど、でもイコール最高じゃない。

ーーそういえば電気グルーヴが新作を全部GaregeBand(Macに付属する音楽制作アプリ)で作ったという話ですね。

テイ:ですよね。まあ(石野)卓球ですからね。(ピエール)瀧は今や国民的俳優だし。あんな2人組いないですよ。あいつらこそニッチですよ(笑)。すごい自信があると思いますよ。

ーーいくら追いかけても近づくことすらできない。

テイ:そうそう。たぶん自分でそれを自覚してる。僕は若い頃から人と違わなきゃいけないと思ってたんですけど、世の中って人と同じであることを求められるじゃないですか。右向け右、的な。みんなが同じ方向にせーので向く感じ。みんなが同じトートバッグを持ってたりね。僕はそういうところは元々なかった。むしろ、自分らしいものが本当に作れるのか、という恐れが常にありました。音楽わからないし、知識もないし、楽器もできないし、コピーとかカバーとか苦手だし。そこで常に戦ってた気がしますね。でも今の若い子はさとり世代っていうのかな。頑張ったっても無駄でしょうっていうのかな、夢がないっていうのかな。クルマなんて維持するのが大変だし、そもそも持ちたいとも思わないとかね。

ーー欲がない。

テイ:僕らの若い時はね、先輩方みたいに毎晩違う女と焼肉食って、フェラーリ乗り回して(笑)……とか思ってましたよ。早くそうなりたいと。そういうギラギラがないんじゃないですか。今はもうそこそこのところで満たされているというか。これ(スマホ)の通話料だけ払っていれば、大抵のエンタメは楽しめるし、コミュニケーションもできるし、情報も手に入るし……。

ーー何もかもがそこで完結してしまうという。

テイ:そうそう。そういうことだと思います。

(取材・文=小野島大)

■リリース情報
『EMO』
発売:2017年3月22日(水)
価格:¥2,700(税込)

<収録曲>
1.Exformation
2.Brand Nu Emo
3.GBI
4.Sugar
5.Xylocopa
6.TG
7.YOLO
8.REM
9.Continua

参加アーティスト:METAFIVE/UA/高野寛/五木田智央/Inara George/あの(ゆるめるモ!)/Atom tm ほか

Artwork by.五木田智央
Mastered by.砂原良徳

『TOWA TEI “EMO” MACH Exclusive Pack』
発売:2017年3月22日(水)
価格:¥2,100(税込)※MACHのみで購入可能
<収録曲>
1.Exformation
2.Brand Nu Emo
3.GBI
4.Sugar
5.Xylocopa
6.TG
7.YOLO
8.REM
9.Continua
Bonus
1.Brocante
2.Exformation (Twice version)
上記2曲のボーナストラックに加えて、ジャケット、ブックレットのPDF付き

■ライブ情報
『TOWA TEI “EMO” Release Party』
2017年4月1日(土)
時間:OPEN/22:00
会場:東京・MUSEUM VISION
DJ:TOWA TEI/砂原良徳/SEKITOVA/Licaxxx/水原佑果 and more…
出演:DOTAMA and more…
チケット:前売¥2,500/当日¥3,000

『dj colaboy presents HOMESICK 32 TOWA TEI ~New Album 『EMO』 Release Party in KYOTO~』
2017年4月21日(金)
時間:OPEN/START 22:00
会場:京都・METRO
DJ:TOWA TEI/tofubeats/HALFBY/AFR/カロリーカット/dj colaboy/Dorian
チケット:前売¥3,000/当日¥3,500/早割¥2,500(ドリンク代別途)

『TOWA TEI “EMO” Release Paty in WAKAYAMA』
2017年4月22日(土)
時間:OPEN/19:00
会場:和歌山・Riche(ダイワロイネットホテル 1F) http://www.montigre.jp/
DJ:TOWA TEI/Shuichiro Horiuchi/kj-s/CO2/DAIAN/FUYURI
VJ:JOE
チケット:前売¥3,000/当日¥3,500(予定枚数終了の場合は当日券なし)

『TOWA TEI “EMO” Release Paty in HIROSHIMA』
2017年5月2日(金)
時間:START/20:00
会場:広島・SUPER SUPPERCLUB
DJ:TOWA TEI and more…
チケット:前売¥3,000/当日¥4,000

『TOWA TEI “EMO” Release Party in FUKUOKA』
2017年5月4日(火)
時間:OPEN/START 21:00
会場:福岡・KIETH FLACK
DJ:TOWA TEI and more…
チケット:¥3,000(+1DRINK ORDER)当日3,500円(+1DRINK ORDER)

■フェス情報
GREENROOM FESTIVAL
2017年5月20日(土)
会場:横浜赤レンガ地区野外特設会場

森、道、市場
2017年5月13日(土)
会場:愛知・蒲郡の大塚海浜緑地

『EMO』特設サイト
TOWA TEI公式HP

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