『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』特集第6弾

ceroが考える“都市と音楽の未来” 「今は『オルタナティヴ』な音楽って成立しにくい」

 3月2日から8日まで一週間にわたり、東京・渋谷近辺にて超大型イベント『TOKYO MUSIC ODYSSEY』が開催される。スペースシャワーTVが主催する本イベントは、「都市と音楽の未来」をテーマに渋谷WWWやWWW Xなど複数の会場にて行われる音楽とカルチャーの祭典。ライブやDJパフォーマンスをはじめ、映像作品の上映やアワード授賞式など、様々なイベントが日替わりで行なわれる予定だ。

 そこで今回、3月4日にWWW Xで行われる『ALTERNATIVE ACADEMY』に、STUTSやYogee New Waves、WONKらと出演することが決まったceroを迎え、本番に向けての意気込みはもちろん、本イベントのテーマ「都市と音楽の未来」にまつわる話をざっくばらんに話してもらった。(黒田隆憲)

「バンドのメンバーの楽器を想像して作るようになった」(橋本)

ーー最近ライブのサポート・メンバーが変わりましたが、調子はいかがですか? 

高城晶平(以下、高城):すごく楽しいですね。練習も面白くて実り多い編成です。これまでもceroというグループはバンド編成......つまりフォーマットが変わることで音楽性が変化していったり、あるいは音楽性の変化に伴って編成が変化したりしながら活動してきたのですが、ここにきてまた変貌を遂げていて。

橋本翼(以下、橋本):これで何期目だろうね(笑)。

高城:いつも僕らは、自分たちが「やりたいこと」に「やれること」が追っつかず、器とそこに乗る素材の大きさが、なかなか合わなくて、素材が揃った時には器が変わってたり、その逆もあったり。今は、ちょうど器と素材がぴったり合っている感じがします。僕ら、『Obscure Ride』(2015年5月)をリリースして以降、演奏スキルがかなり鍛えられ、ようやく自分たちが「やりたいこと」と「やれること」が揃った気がする。そのうちにまた、ズレが生じてくるのかもしれないですけどね。とにかく今は、バンドとして脂が乗っている時期なので、いろんな人に見て欲しいです。

荒内佑(以下、荒内):今の編成のいいところは、メンバー各々の「能力差」がすごくあるところ。譜面をケータイのメールみたいにパパッと読める人もいれば、読めない人もいて。めちゃくちゃ演奏が上手い人もいれば、俺みたいによくわかんない演奏している人もいる(笑)。どっちが良い悪いじゃなくて。それがすごく豊かだなって思うんです。すごく「社会」っぽいというか。

高城:そうだね。「ソーシャル」がバンドの中にある感じがする。

高城晶平

荒内:みんなが同じように上手かったり、同じように下手だったりするよりは、能力差がある方が魅力を感じます。飲み会もそうじゃないですか、同じ話題を同じようにするというよりは、多様な話題になって。今はそういう面白さがあります。

ーーそれって、お互いの価値観の違い、能力差を楽しめるからこそできるんですよね。能力のある人がない人にイライラしたり、逆にやっかんだりしたら、そうはいかない。

荒内:まあ、多少はそういうイライラもあると思いますけどね(笑)。それもスパイスです。

橋本:以前曲を作る時は、「ライブで再現するにはどの楽器を代わりに使ったらいいんだろう」と考えていたんですが、今はバンドのメンバーの楽器を想像して作るようになった。「このフレーズを彼が演奏したらどうなるかな」とか、一人ニヤニヤ想像しながら作っています(笑)。

ーーさて、今年も『TOKYO MUSIC ODYSSEY』が開催され、『ALTERNATIVE ACADEMY』にはceroもラインアップされています。確か昨年の『ALTERNATIVE ACADEMY』は、残念ながら直前に出演キャンセルになってしまったんですよね?

高城:そうそう。橋本くんがね、二日前だったかな、インフルエンザに罹ってしまって。

橋本:すみませんでした!

高城:ちょうどウイルスの潜伏期間だったから、これはどうしようもないと。出演キャンセルは、震災の時を除くと初めてだったかな。とても残念だったんですけど、「もし次回がありましたら是非」というふうに思っていたので、今年もこうやって呼んでいただけて光栄です。

ーー高城さんと荒内さんは、観に行かれたそうですね。

高城:はい、客席で観ていたんですけど、なんだか複雑な気持ちでしたよね。置かれている立場として、素直に楽しめる感じではなかったんですけど(笑)。でも、とてもオシャレで素敵なイベントでした。

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