KAT-TUN、「充電中」のいまだからこそ3人に注目したい理由

 そうした個々の活動の充実は、メンバー同士の関係性の純度もより高めているように見える。

 たとえば、先ほどふれた『緊急生放送! 中丸雄一スペシャル』では、中丸が上田竜也と亀梨和也の元をそれぞれ訪れ、報告がてらアドバイスを求めるという場面があった。上田はMC就任を「おめでとう!」「やったじゃん!」と祝福した後、番組予算を抑えるため“リーズナブル”な中丸に決めたと聞いて「ちょっと中丸いじめんなよ!」「オレ出てくっかんな!」とネタに乗っかりながらもメンバー愛をほとばしらせた。亀梨も亀梨で、“リーズナブル”の話を聞き「充電中だし」「僕らセール中なんで」と自虐しながらも「人は良いのでみなさん応援してくれると思います」と中丸を後押しする温かいエールを送っていた。

 こうした絡みを見ていると、昨年3月まで放送されていた『KAT-TUNの世界一タメになる旅!』(TBSテレビ系)(以下、『タメ旅』と表記)が思い出される。この番組でも彼らは番組スタッフからいじられ、それを笑いに昇華させていた。番組放送期間中に田口淳之介の脱退発表というとても大きな出来事があったが、そのこともタブーにせずネタにしていたところは、それまでのジャニーズのバラエティにはおよそ見られないものだった。いま思えば『タメ旅』という番組は、バラエティのスキルを磨くだけでなく彼らを精神的にタフにする効用もあった。

 当然、彼ら3人のなかにいま共通してあるのは、個人活動の充実をステップにしたグループ活動再開への思いだろう。『PとJK』の話題で『PON!』(日本テレビ系)に出演した亀梨和也は、「いま守りたいものは?」という質問に「まあ普通にグループもそうですし、そこはそうかもしれないですね」と真剣な面持ちで答えていた。

 「KAT-TUN」というグループ名がメンバーの名前のアルファベットを組み合わせたものであるという話は有名だが、漫画の「cartoon」にかけて「1ページ読むとまた次のページが読みたくなる」という意味合いも込められている。そのことになぞらえるなら、「充電」は、KAT-TUNというグループの物語の中断ではなく、むしろこれから描かれる新たなページへの期待感を高める1ページになっている。『タメ旅』の最終回、400人のファンがボードで彼らに送った「放電するなよ!!」というメッセージは、しっかりと3人に受け止められたと言うべきだろう。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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