SHE’S 井上竜馬、自身の過去に向き合い導き出したこと「動こうと思うきっかけって理屈じゃない」

SHE’S 井上竜馬、自身の過去に向き合い導き出したこと「動こうと思うきっかけって理屈じゃない」

失くしたものばっかり追いかけてる

――無意識下の記憶に向き合うっていうテーマは、きっかけとは言えなかなか重いですね。

井上:この1年はほんまに……辛かった分、色々なことをゲットしましたね。というか、そういう時間の中でしか人間て得られへんのかな? とも思ってきました。すごい幸せの中で人間ってなんか得るんかな? って思うんですよね。

――物作りに関してはそうかもしれないですね。満たされてる時に何かを見つけるのは難しいのかもしれない。

井上:え? でもそうじゃないですか? 物作りじゃなくてもそう思うんです。すごい満たされてる時は麻痺してる感覚になるし、例えばめっちゃ楽しくて、友達と「うわー」っていう時に、一人ふと「でもこれって何時間かしたら終わるしな」って思う人はなかなかいないし、終わって気づくことが多いじゃないですか。だから「辛い」と思うけど、今年1年やり切れたおかげで、それが辛い時に「辛い」だけじゃなくなったのは、すごい糧じゃないかなと。

――確かに。音楽的な新しさでいうと「Say No」が面白かったですね。今の洋楽的なシンガロングのパートのある曲で、しかもそのメロディで「No」って歌う人は珍しいなと。

井上:そうですね。でもそこしかなかった(笑)。「No」でしたね。「Oh」は自分たちの曲でも結構色々やってきたし、無駄な音を入れたくないという感じもあったので。

――このメロディに乗ると怒りの「No」ではないというか。

井上:怒りではないですね。もっと柔らかいものや、しなやかさというか。でも強さもあるなと思ったんですよ。別に力強い曲で「Noって言え」って言いたかったんじゃなくて、あくまでもこの歌詞は隣にいることが目標やったというか。隣にいて欲しかったっていう自分がいたからこそ、過去を遡って、「あの時Noって言えてたらな」と思ったし。そうすれば大切な人を悲しませるもの全部、拒否できたなと思って書いた曲ですね。

――次の曲の「Tonight」につながりますね。

井上:この曲順じゃないと無理やなと思いましたね。

――中盤にはコミカルな曲も出てきます。「グッド・ウェディング」の設定は?

井上:設定というか、僕がある女の子と付き合ってた時の実話なんですけど。えー……その付き合った子はもともと彼氏がいて、なんていうんですか? 略奪で付き合った子やったんですけど、しばらくして……その子が「やっぱり罪悪感がある」と。「井上くんにもあの人にも私は悪いことをした、私は今、ひとりでいるべきや」と。で、フラれたものの秒速で元彼とヨリを戻し、子供が生まれ結婚したということがあって。それに対してウルトラ皮肉を込めて「グッド・ウェディング」みたいな、そんな感じですね(笑)。

――ある種のコミカルさが感じられるので、井上さんの中ではカタがついているのかなと思いました。

井上:そうですね。単純な失恋とも違うし。なんか明るく歌いたかったんですよね、こういう内容を。

――「もう恋愛こりごりやわ」みたいになってないですか?

井上:こりごりっすよ、だいぶ(笑)。めんどくさいんですよね……何がめんどくさいって自分が一番めんどくさいんですよ。恋愛してる時の自分が一番めんどくさくないですか? 「え? 俺、本心でこんなこと思ってんねや」って気付いた時の自分への苛立ちと情けなさと恥ずかしさと……まぁ、そこから変わってやろうっていう気持ちもあるんですけど、でも今は音楽に集中してたいですね(笑)。

――井上さんが生きていく上で、どの曲のテーマも解決はしてないわけじゃないですか。そのことについて今はこう考えているという内容で、全部連れて生きていくしかないわけで。

井上:まぁ、そうですね。

――自分に向き合うしかフルアルバムを作る手法が今回はなかった?

井上:うん。今回はそうですね。これからはわからないですけど。でもこのやり方以外で曲を書けんのかな? とも思うんです。もちろん自分にとってはヘヴィですよ。忘れたかったことをまた自分で思い返しにいくわけなんで。それはやっぱり恥ずかしくなるし、悔しみもあるし。でも、そもそも自分の中で隠したいこととか、秘めときたいことって絶対あると思うんですけど、それとはちょっとニュアンスが違うと思うんです。自分が判断してた悪い部分に見えてたそれは、自分の中で「あかんな、そのままにしてたら」と思ってたことやし、それを思い返したらどうなるかな? とも思った。けど、書き終えて一枚アルバム通して聴いたら、「プルースト」の最後の方で言ってるんですけど、結局それも抱えたまま生きていくわけやから、なんかやってよかったな、それがわかっただけでもって。それを死ぬまで持っていくなら、ちゃんと自分で理解したかったし、それができたから、自己満足かもしれないけど、よかったなと思いましたね。

――曲を書いていくことってドキュメントでもあり、パーソナルなことだからこそポピュラーなものでもあるのかなと思いました。

井上:ポピュラーなものでありたいですよね。サウンドとしてはファンタジーな感じも好きやし入れていきたいんですけど。歌詞に関してはそういうポピュラーな音楽に救われてきたから、自分もそういう音楽をやりたいなっていうのはありますね。

――このアルバムのイメージとして、もう会えない人に対しての祈りのようなものを感じたんですよね。

井上:そうですね。失くしたものばっかり追いかけてるなぁっていうのは思ってたんで、そういうアルバムになりましたね。でも、”花束”っていう言葉をつけたのは期待してるからというか、自分の感覚が今後変わっていくやろな、変わってほしいなと思うし、綺麗なものとして昇華されていってほしいなという思いもありつつ……でもそうですよねぇ、すごい赤裸々というか「自分」なアルバムになっちゃったなと(笑)。

――“花束”っていう言葉自体が一つ2016年らしいなと思っているんですよ。宇多田ヒカルさんのシングルのタイトルしかり、Gotchの2枚目のソロアルバム『Good New Times』のタイトル曲がメッセージを花束という比喩にして、花束を渡していくMVだったり、あとは小山田壮平さんと長澤知之さんのALの1stアルバムから最初にMVが公開されたのが「花束」って曲で。

井上:ぽいですね、小山田さん。

――井上さんにとって花束って言葉に象徴されるものはどういうものだったんですか?

井上:僕は単純に記憶自体を一つの花に例えていっただけやったんで、自分の記憶を遡って書いた曲たち11曲、答えが11個集まったから”花束”にしただけなんですけど。なんで花か? っていうのは、記憶って綺麗なものになっていくものやし、なっていってほしいから。今まだ綺麗になりすぎてもないし、なりきれてもないところやからきっとこういうコンセプトのアルバムを書いたんやと思うんです。

SHE’S「Tonight」

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