ガラケー版「着うた(R)」15年間のランキングから見えるもの 柴那典が時代背景とともに分析
株式会社レコチョクが、「着うた(R)」と「着うたフル(R)」のケータイ向けサービスを2016年12月15日の23時59分に終了し、同サービスの累計ダウンロード数をもとにした「ケータイ アーティストランキング」「ケータイ 着うた(R)・着うたフル(R)楽曲ランキング」(集計期間:2002年12月3日~2016年11月30日)を発表した。
同サービスの累計ダウンロード数は、2008年10月に10億を突破し、2016年11月末時点では17億ダウンロードを記録。「アーティストランキング」の1位はEXILE、「楽曲ランキング」1位にはGReeeeNの「キセキ」が輝いた。そのほかのランキングは以下の通り。
レコチョク ケータイ アーティストランキング
集計期間:2002年12月3日~2016年11月30日
種別:着うた(R)、着うたフル(R)、着うたフルプラス(R)
1位 EXILE
2位 倖田來未
3位 浜崎あゆみ
4位 ORANGE RANGE
5位 コブクロ
6位 大塚愛
7位 GReeeeN
8位 宇多田ヒカル
9位 西野カナ
10位 中島美嘉
ケータイ 着うた(R)・着うたフル(R)楽曲ランキング
1位「キセキ」GReeeeN
2位「そばにいるね」青山テルマ feat.SoulJa
3位「愛唄」GReeeeN
4位「恋のマイアヒ」オゾン
5位「蕾(つぼみ)」コブクロ
6位「花」ORANGE RANGE
7位「三日月」絢香
8位「Story」AI
9位「Lovers Again」EXILE
10位「純恋歌」湘南乃風
※100位までのランキングの詳細はこちら
同ランキングは、ひとつのサービスが作り上げた音楽シーンの15年間が凝縮された、資料的価値の高いものといっていいだろう。先日『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)を上梓し、著書内でオリコンやビルボードなど音楽ランキングの動向についても取材・分析を行なった音楽ジャーナリストの柴那典氏は、このランキングが持つ意味についてこう語る。
「楽曲ランキングのTOP10を見たとき、興味深いのはそのうちTOP5にあたる楽曲のうち4曲のリリースが2007年前後に集中していること(GReeeeN『キセキ』と青山テルマ feat.SoulJa『そばにいるね』が2008年、『愛唄』とコブクロ『蕾』が2007年)。このことから、2007年前後に着うた(R)が隆盛を極めたことがわかります。僕自身も著書『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)で書いたのですが、2007年はニコニコ動画の正規版・SoundCloud・初音ミク・iPhoneなどがリリースされ、TwitterやSpotifyなどが認知され始めるなど、2010年代の基盤となるサービスやプロダクトが一気に出てきた1年でした。ここが時代の転換点だったことが改めてよくわかる、非常に面白いランキングだと思います」
また、年代別とは違った形で、楽曲たちを次のように分析した。
「年代別ではない視点から楽曲の傾向を分析すると、00年代のインターネット上のコミュニティは主にPCユーザーを中心としたもので、ガラケーにおいては10代を中心に全く別のコミュニティが生まれていた、ゆえに生まれた“ガラケー文化”のようなものを象徴するランキングになったと思います。。つまり、かつてはオタク的な文化とリア充的な文化が違うアーキテクチャの上で展開していた。今はその両方がスマートフォンという共通したプラットフォームに吸収されたわけです。ランキング上位にある曲は、今の10代だったらTwitterでカップル共同アカウントを作ったり、もしくはMixChannelに仲睦まじいカップル動画を公開しているようなメンタリティの持ち主が聴いていた音楽へ偏っているように見受けられます。そのなかで『恋のマイアヒ』は、今年だとPPAPのように文脈を超えていろんな人が繋がる楽曲だったと言えるのかもしれません」