Spotify、Apple Music、TIDAL…世界の音楽配信ここまで進んだ 各サービス現状と日本での展望

 先日、Newspicksによって報じられた、定額配信「Spotify」日本上陸の噂。この数年、日本上陸の情報があとを絶たず、ヤキモキさせられる。そんな定額配信は、この間も世界の音楽業界を席巻し、ダウンロードを脇役へ追いやる勢いでストリーミング時代を牽引している。はたして現代の音楽好きにとって定額配信とはどんな存在なのか。この原稿では、音楽の未来を期待させる定額配信が、現在世界でどれほど先を走っているのか、そしてこれから日本では何が期待できるのかを探りたい。

 話をアメリカに飛ばすと、この7月に一つ重要な指標が公開された。それは2016年前半で、オーディオ形式の音楽配信が動画形式の音楽配信を歴史上初めて上回ったと、調査会社のニールセンによって伝えられている。

 以前は(そして今でも)、YouTubeが音楽を楽しむ場所として決まっていた。だが調査によれば、オーディオ形式の音楽配信は、再生総数が1136億回まで上昇し、2014年に比べて108%増えているそうだ。だが動画形式の音楽配信は、再生総数が953億回、伸びは28.6%と伸び悩んだ。

 この結果は、Spotifyをはじめ、アップルが手掛ける「Apple Music」や、高音質での配信を売りにする「TIDAL」といった、昨今話題に上る定額配信が着実に市民権を得ていることを証明している。

音楽に夢中にさせる

 Apple Musicは開始からわずか1年たらずで、有料ユーザーを1500万人以上集め、課金制の音楽ビジネスへ進路変更している。これまでiTunesストアを通じたファイル・ダウンロードで音楽を楽しむ行為に配信が加わったことで、手軽に楽しみたいライト層から、没頭したい愛好家まで、”音楽”への関心を改めて高めている。

 Apple Musicといえば、海外アーティストたちの作品の先行配信が注目を集めている。今年に入っても、ドレイクのアルバム『Views』やチャンス・ザ・ラッパーの『Coloring Book』など、若者中心に人気の作品を配信したのだが、結果的に前者はアルバムチャート1位、後者で言えばApple Musicの配信のみでトップ10入りした初のアルバムとなり、先行配信が持つマーケティングパワーを体現し業界構造を変えている。

 今年7月には、アプリ内でしか聴けないラジオ局「Beats 1」のDJ、Ebro Dardenが六本木のJ-WAVEスタジオ内から日本のヒップホップをテーマに生放送を行ったことも、国内で注目された。配信を音楽を届けるだけに留まらず、自らも音楽を掘りファンと結びつける双方向な音楽のやり取りが、ユーザー任せにしない体験として世界レベルで始まっている。

 極端に言えば、最新音楽の登竜門としての機能を果たすApple Musicは、ストリーミング時代のMTVと呼べるかもしれない。

 日本に上陸していないサービスだが、海外でニュースのヘッドラインを度々飾る「TIDAL」。ヒップホップの世界で知らない人はいないジェイ・Zが、運営する定額配信だ。ジェイ・Zは、アーティスト以外にも、総合エンターテインメント会社「ロック・ネイション」を運営する起業家であるだけに、配信についても野心的だ。

 アーティスト目線なTIDALは、ロスレスのCD音質での配信が注目されている。HIFIスピーカー・ブランドとすでに組むなどして、オーディオ愛好家向けの配信というジャンルを開拓しつつある。

 しかしながら、TIDALでも狙いは若者層の音楽好きで、そのための”独占コンテンツ”は大きな売りだ。ビヨンセ、カニエ・ウェスト、リアーナなどの期待の新作を次々と独占で配信し続け、ビヨンセの『LEMONADE』に至っては未だに配信ではTIDALのみでしか聴くことができない。またカニエ・ウェストのファッションショーに代表されるエッジの利いたイベントの動画ライブ配信も積極的に取り組んでいる。

 アップルのブランド力には劣るが、TIDAL独自の魅力に惹かれ、ソーシャルメディアで圧倒的な影響力を持つアーティスト達が集まる。TIDALは最も的確にソーシャル時代の拡散力を体現する音楽サービスだ。今は有料ユーザーがわずか420万人だが、今後どのように定着していくか、関心があつまる。

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