森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.26
欅坂46、スキマ、あいみょん、chay、冨田ラボ……プロデュースワークが光る作品たち
現代社会の生きづらさ、閉鎖的な空気、そこからどうにか抜け出そうとする意志を込めた楽曲によって大きな注目を集めている女性シンガーソングライター、あいみょんのメジャーデビュー曲「生きていたんだよな」は、飛び降り自殺のニュースを題材に“生きること”の意味を投げかける衝撃作。もちろん強烈なインパクトを備えた楽曲なのだが、聴き心地はきわめてポップであり、曲が終わったときには爽やかな感覚が残る。その要因はYUKI、いきものがかりなどの楽曲を手掛けてきた田中ユウスケ(agehasprings)によるサウンドプロデュース。あいみょんのキャラクター、楽曲のパワーをまったく薄めることなく、幅広い層にアプローチできるポップソングに昇華させる手腕は流石のひとこと。あと、彼女はとんでもなく歌が上手いと思う。
ポップマエストロの名を欲しいままにしている音楽プロデューサー・冨田恵一のソロプロジェクト、冨田ラボの5thアルバム。YONCE(Suchmos)、安倍勇磨(never young beach)、コムアイ(水曜日のカンパネラ)、高城晶平(cero)、坂本真綾、藤原さくら、AKIOといったゲストボーカルのセレクトも最高だし(本作に参加したアーティストをチェックするだけで、いまのシーンを網羅できると思います)、現在の音楽のトレンドとの距離感を正確に見極めつつ、エレクトロとオーガニックをバランスよく配置したサウンドメイク、かせきさいだぁ、掘込高樹(KIRINJI)などが手がけた歌詞も驚くほど高品質。プロデュース・ワークの粋を極めた、まさに「SUPERFINE」(極上・繊細)と呼ぶにふさわしい傑作である。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。