パスピエ 成田が語る、“葛藤”と向き合った5年間の軌跡「バンドの根幹は太くなってる」

パスピエ成田、5年間の軌跡を語る

「現実と非現実をひとつのCDにまとめたかった」

ーーそして今回のシングルには、2011年11月23日にリリースされたデビュー作『わたし開花したわ』の収録曲を成田さん自身がリミックスした「わたし開花したわ re(mind)mix」も収録。シングルの発売も同じ11月23日だし、5周年にふさわしい音源ですよね。

成田:はい。5周年というのもあるし、リミックスを誰かに託すのは違うかなというのもあったので、ここは自分でやろうと。ふだんからリミックスをやっている方の“リミックスだ”感ってあるじゃないですか(笑)。その良さもあるんだけど、このタイミングでは自分たちでやるべきだろうなって。去年、フェスの会場限定のMIXCD『パスピエ フェスミックスCD』を出したんですけど、ミックスを自分でやったのはそのときが最初で、今回が2作目ですね。

ーーDJのミックスとはやっぱり違いますよね。

成田:ぜんぜん違いますね。僕はリミックスのイロハも知らないですし、「こうやったらおもしろいかも」という興味だけでやってるので。実際の作業はそれこそ“面倒”というか(笑)、まず全部の曲のパラデーターーボーカル、ベース、ドラム、ギター、鍵盤のデータですねーーを取り込んで。「どの部分をカットして、つなげたらいいか」ということをある程度組み立ててから作業していったんですけど、時間はかかりましたね。『わたし開花したわ』はパスピエのバンドとしての肉体性が認識される前の作品なので、あえてそういうところ(肉体性を感じさせない部分)を引き立たせるのもおもしろいかなって。5周年と言っているくらいなので、いま現在のパスピエを見せるだけではなくて、“過去からの流れがあって、いまこうなってる”ということも伝えたいので。このリミックスで再認識できたこともあったし、それをリスナーのみなさんにも共有してもらいたいなと。

ーーデビュー作に改めて向き合うことで、発見もあった?

成田:「この部分はこうしておけば良かった」ということはありましたね。「いまだったら、こういう遊びも出来る」ということも今回のリミックスには取り入れてたり。「メーデー」は自分たちの内側と向き合った曲だから、このリミックスはフェイクの部分を表現したいという気持ちもあったんですよ。現実と非現実のどちらもあるのがパスピエだなって思っているし、それをひとつのCDにまとめたいなと。

ーー『わたし開花したわ』はパスピエの原点となる作品で、いま聴いても音楽的なクオリティは本当に高いと思いますが、当時はどんなテーマで制作されたんですか?

成田:当時の自分たちの音楽性のなかで、いちばんJ-POPなものを作ってやろうと思ってましたね。だからオーケストラ・アレンジの曲を入れてみたりもして。

ーーやはりデビュー当初はポップスにアプローチしていたんですね。

成田:そうですね。ただ、僕自身がフェスを見てバンドを始めたくらいだから、さっきも言ったように「バンドとしても認知されたい」という気持ちもあって。そこからいろんな紆余曲折があったんですけど、去年の武道館で両方を納得するカタチで見せられたと思っていて。それは作品作りにも出てるんですよね。『娑婆ラバ』はまさにそういうアルバムだったと思うし。いまみたいな立ち位置でやれるとは、正直思ってなかったんですけどね。そうなりたいとは思っていたけど、先のことはわからないので。

ーー様々なトライ&エラーを経て、ポップスとしての質の高さ、ライブバンドとしての魅力がバランスよく表現できるようになった、と。そう考えると、12月に行われるホールツアーはひとつの集大成になるかもしれないですね。会場の大きさ的にも、パスピエの多彩な音楽性をしっかり見せられるだろうし。

成田:はい。ただ「これから僕らはホール・バンドになります」ということではなくて、ライブハウスも続けていきたいし、やっぱり両方を見せたいんですよね。

ーー2016年は「もう一度、自己紹介をする年」と位置付けていましたが、それを達成できた手応えもありますか?

成田:シングルを3作出したし、作品としてはやっているつもりですけど、それが浸透したかどうかはわからない部分もありますね。次のアルバムが出たときに、その答え合わせが出来たらいいなと思ってます。たぶん“2周目”という感じの作品になるんじゃないかな。「これまでのパスピエのいろいろな要素が顔を出している」と捉えられるかもしれないし、「また新しい道に進んだ」という捉え方もあるだろうし。まあ、まだわからないですけど(笑)。

ーーリスナーの反応が音楽性に影響するということは、この後も変わらない?

成田:ポップス、大衆音楽をやっている以上、そこはやっていかないと。もちろんオリジナリティも追求しなくちゃいけないし、そこはずっと課題になっていくと思います。僕らはまだ爆発的なヒット曲を出せてないけど、もし出せたら、今度はそれを背負っていかないといけないし。音楽をやっていれば、そういう葛藤はずっと付きまとうでしょうね。

(取材・文=森朋之)

■リリース情報
『メーデー』
発売:2016年11月23日
【初回限定盤(CD+DVD)】 ¥1,800 (税抜)
【通常盤(CD)】 ¥1,000 (税抜)
<収録曲>
1. メーデー
2. 月暈
3. わたし開花したわ re(mind)mix [mixed by 成田ハネダ]
<DVD収録内容> ※初回限定盤のみ
パスピエ presents 印象E 2016.6.17 Live at STUDIO COAST
1. ヨアケマエ
2. チャイナタウン
3. つくり囃子
4. MATATABISTEP
5. トキノワ
6. S.S

■ライブ情報
『パスピエ 5th Anniversary Hall Tour』
12月4日(日) 愛知 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
12月16日(金)  大阪 オリックス劇場
12月22日(木) 東京 中野サンプラザ

■パスピエ5周年特設ページ
http://passepied.info/feature2/p/5th_anniversary

■オフィシャルサイト
http://passepied.info/

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