『JTNC』に対する日本からの回答? 気鋭のバンドWONKが提示するハイブリッドな音楽
ディアンジェロやグラスパー以降のビート感覚を作品に忍ばせるということは、ここ日本でもメジャー・シーンではceroや星野源がすでにやっているし、yahyel、TAMTAM、ZA FEEDOなどの俊英も部分的に試みてはいるだろう。だが、その中でもWONKは頭ひとつ抜けているという印象だ。シルキーでハスキーなボーカル、官能的で艶やかな管楽器、重厚な低音を響かせるベースなどが、唯一無二の妖しく黒光りするサウンドを創り上げている。いちばん近い音を出しているのは、オーストラリアのハイエイタス・カイヨーテかとも思うが、ビート・ミュージックやヒップホップ、ジャズなどを貫通するWONKのハイブリッドなサウンドはすでに確固たる個性を確立していると思わされる。
日本人なりにブラック・ミュージックの最先端を吸収・咀嚼しながら、オリジナルな表現を創り上げたWONKの『Sphere』は、結成3年目とは思えない濃度と密度で聴く者を圧倒するだろう。11月12日には同作の発売を記念してのワンマンライブも行なわれるというから、ぜひ生でその音圧を体験してほしい。
■土佐有明
ライター。『ミュージック・マガジン』、『レコード・コレクターズ』、『CDジャーナル』、『テレビブロス』、『東京新聞』、『CINRA.NET』、『MARQUEE』、『ラティーナ』などに、音楽評、演劇評、書評を執筆中。大森靖子が好き。ツイッターアカウントは@ariaketosa