欅坂46主演『徳山大五郎を誰が殺したか?』音楽担当が語る、“歌入りの劇伴”にした理由

欅坂46『徳誰』音楽担当が語る、“歌入り劇伴”の理由

 欅坂46メンバーが総出演&初主演を務めるミステリー&コメディ学園ドラマ『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)が、10月1日の地上波放送で最終回を迎える。1stシングル『サイレントマジョリティー』での鮮烈なデビューから3カ月という異例の早さで制作された今回のドラマは、欅坂46メンバー全員が学園の生徒として実名で出演。私立欅学園三年C組の教室を舞台に、生徒たちが嶋田久作演じるクラスの担任教師・徳山大五郎の死体を発見するところから物語はスタートする。企画・原作に秋元康、監督を豊島圭介、古厩智之、吉田浩太の3名が担当。21名の個性豊かな生徒、教師たちが織りなす繊細で危うい人間ドラマは、時に常軌を逸した恐怖とブラックコメディ的要素をはらんでいる。ドラマの演出にさらなるサスペンス要素を加えているのが、作曲家/音楽プロデューサーのスキャット後藤が手がけた音楽だ。アコースティックギターの音色や、狂気をはらんだブラスが鮮明に記憶に残るが、中でも特徴的なのが子供や男性の声が入っている“歌入りの劇伴”。今回スキャット後藤にインタビューを行い、劇伴制作のエピソードに加え、収録現場の裏側、後藤が音楽・効果音を担当した欅坂46の上村莉菜個人PV「効果音ガール」についても話を訊いた。(編集部)

「この作品だったらできるんじゃないかな」

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スキャット後藤

ーーまずは、スキャット後藤さんの音楽的ルーツを教えてください。

スキャット後藤(以下、後藤):僕のルーツは歌謡曲とJ-POPですね。1971年生まれなんですけど、小学生のころは『ザ・ベストテン』(TBS系)を観て、中学生になるとおニャン子クラブが出てきたり、高校時代には小室哲哉にはまり、大学に入ってから音楽を始めたんですね。シンセサイザーを買って、いきなり1人で曲を作り始めてというのがスタートだったんです。歌謡曲、J-POPがやっぱり大好きで、そういう音楽を作りたい、歌いたいと思っていたのですが、蓋を開けてみたらインストゥルメンタルばっかり作るようになっていて。京都出身なので京都のゲーム会社で3年ほど音楽を作ってました。僕はドラマの音楽に歌を入れたがるんですけど、それはシンガーソングライターになりたかったけどなれなかったことが影響しているのかもしれません。

ーー歌入りの劇伴は本ドラマの特徴の一つでもありますよね。

後藤:今回の劇伴にも変な歌詞が付いている曲がちょこちょこ入ってるんですけども、そういうのも本来はいらないんですよね。でも、この作品だったらできるんじゃないかなと。普通のドラマだと歌詞まで入れちゃうとうるさすぎるんですけど、今回欅坂46は演技が初めてなので、いかに編集や撮り方、音の付け方で補完してあげるかを考えました。ドラマは2話毎に作っていったんですけど、1話、2話を作ったときに、1話は結構ゴテッとした作り方で、2話が比較的、普通のドラマにありがちな音の付け方になったんです。その時に、加藤章一プロデューサーから「2話みたいな感じは、ほかのドラマでも出来るよね。1話だと声入りの曲が鳴ってたりとかしていて、このドラマらしいね。一話の普通じゃない方をこの先最終話までやっていこう」という話があって、「最高な人たちやな」と思いましたね。普通の現場だと、段々と角が取れていくんです。徳尾浩司さんの脚本もすごく良くて。作品が評価されたのは台本、選曲さんのおかげだと思いますね。

ーー豊島圭介監督はAKB48出演の『マジすか学園』『マジすか学園2』(テレビ東京系)を手がけていましたが、今回の『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)はより“本気”を感じさせる作品クオリティです。

後藤:そうですね、めちゃくちゃ本気ですね。豊島監督とは16年くらいの長い付き合いなんですよね。僕がフリーになった2000年に知り合って、彼がまだ仕事し始めの時期に知り合いました。

ーー今回、劇伴を担当することになったきっかけは。

後藤:以前から豊島監督を知ってたというのも大きいと思いますけど、なんでですかね……分からないです(笑)。2月に吉祥寺で豊島監督と漫画家の押切蓮介くんと3人で蕎麦を食べたんですよ。そこで蓮介くんがトイレに行った時に、「まだ決まってない話で、欅坂46のドラマをやるかもしれないんだけど、スケジュールいける?」と言われたのが最初で。その1カ月半後ぐらいに「GOが出たからよろしく」って電話がかかってきて。吉田(浩太)監督とも昔何回か一緒に仕事していたし、編集の村上(雅樹)さんとは『殺しの女王蜂』(テレビ東京系)で一緒にやっていて、あとは今野浩喜さんともご一緒していましたね。

ーードラマは「ミステリー&コメディ」がコンセプトですが、劇伴がより怖さやシュールな笑いを引き出しているなと感じました。

後藤:僕が作った音楽を、選曲の大久保(吉久)さんと豊島監督、古厩智之監督、吉田浩太監督それぞれがシーンにどういう風に付けるかを決めていくんです。中には、僕が決めたりしたものもあるんですけど、空調ノイズなんかは効果担当である井上(奈津子)さんが担当していたり、フレーム単位で音をどうするかというのを細かく作っていますが、特に3人の中でも豊島監督が一番細かいです。豊島監督は打ち上げの時に「こんなにストレスのなかったチームは初めてだ」って言っていました。

ーークランクアップ前には一カ月半ほどメンバー向けにワークショップがあったらしいですね。

後藤:ワークショップ、何度か行きました。セットも撮影場所に2カ月ほど構えてあって、そこにも行ける時はどんどん行って。4月の末に初めて欅の子たちを見た時の印象は、「2万人の中から選ばれた子たちだから、さぞかしギラギラしてるのかな」と思ってたんですけど、みんな消極的な感じで。教室のセットを作ってずっとそこで撮るというのも聞いていたし、ステージに上がって脚光を浴びるのとは違って、ドラマの撮影は地味で同じことの繰り返しなので大丈夫かな……って。クランクイン前にはすでに曲が7割くらいできていてその後、秋元(康)さんから「もうちょっとサスペンス色の強いものにしよう」という変更があったんです。そこから急遽、怖いシーン用の音楽を作っていったら、そっちがメインになって。だから、よく流れてる曲は後半に作った曲です。普通なら台本を読んで「ここにこういうテーマがいるな、悲しいシーンだからこういう曲」という風に必要な曲を作っていくんですけども、今回はそういう作り方ではなかったんです。事前に豊島監督とドラマの世界観について話をして、それに沿って曲を作っていって。どういうはめ方をするかは映像が出来てから考える作り方だったので、結構無責任に作れました。素材を作るという感覚が強くて、ドラマの世界観を音楽でどう表現するかだけに没頭できました。嶋田久作さん演じる徳山大五郎の死体にナイフが刺さっていて、それを生徒たちが囲むシーンなんかは深刻にならないようフィクション度を高くするために、雰囲気とは全然違う音楽を付けていったり。はっとするような音楽の使い方をしていて面白かったのが、5話目で生徒たちが(長濱)ねるを囲んで“裁判”をしている最中に教室へ入ってきた先生のノエルに、米さん(米谷奈々未)がフランス語を喋った時に流れた音楽。全然そういう使い方を想定してなかったんですけど、選曲の大久保さんが「ここに入れると面白いよ」って。

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長濱ねる

ーーサントラには10曲目に「フランス語」として収録されていますね。

後藤:あと「音楽は編集で切り刻んでもらっていいです」と大久保さんに伝えていました。要は「ここは音楽的に切れてほしくない」とか「こことここは繋げてほしくない」というのが作曲家にはあると思うんですけど、それをしてしまうと演出的によくないので「切り刻んでも大丈夫なように作ってある」って言って。シーンによっては2曲重なってたりもするんですよね。リズムだけの曲とベルっぽい音だけを重ねた使い方をしてたりとか。本当に自由にやってもらってる感じですね。ラストにいつも流れる曲(「来週どうなるの?」)も、一回静かになってギターだけガーン! と来るところとかは、どういう編集になってるのか作った本人以外気づかなかったりするので、サントラ聞いたときに「あ、こここんな編集してたのか」と思ってもらえたらいいかな。

【土曜ドラマ24】徳山大五郎を誰が殺したか?

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