EXILE ATSUSHIはなぜマーヴィン・ゲイと美空ひばりを同時に歌う? 宗像明将の東京ドーム公演レポ

EXILE ATSUSHI東京ドーム公演レポ

20160910-atsushi5.jpg

 

 2016年8月31日にEXILE公式サイトに掲載された「EXILE、EXILE ATSUSHIを応援くださる皆さんへ」には、EXILE ATSUSHIによるこんな一文がある。

 「EXILEの音楽性の原点は、本場アメリカなどのR&Bや、ダンスミュージックを、日本の皆さんが、より聴きやすいであろう形に変化させ、そこにさらに、日本人の独特の、“魂” や“心” というものを加えた、それは自分達なりの、新しいジャンルへの挑戦だったとも思っています」

 この一文は、実はそのままEXILE ATSUSHIの東京ドーム公演を表現するものだ。愚直なほどに、彼は上記の一文そのままの音楽を追求していたし、それが選曲の振れ幅の大きさにもつながっていた。日本の戦後歌謡史を洋楽の咀嚼の歴史だとしたら、EXILE ATSUSHIの東京ドーム公演は彼個人の歌謡史であったのだ。マーヴィン・ゲイと美空ひばりを東京ドームで同時に歌えるアーティストはEXILE ATSUSHIぐらいだ。そして、それを5万人の観客に説得力を持って届けることができるのもEXILE ATSUSHIぐらいである。

 ボーイズIIメンとの共演を見れば、EXILE ATSUSHIが海外に活動拠点を移すこともごく自然に納得できる。彼が目指している次元は、あの世界水準なのだ。近年のEXILE関連作品が、J-POPのど真ん中でEDMやベース・ミュージックまで取りあげていることとも無関係ではないだろう。海外での活動を経て、EXILE ATSUSHIがさらなる音楽のミクスチャーをJ-POPシーンに届けてくれることを楽しみにしたい。素直にそう思えるのは、東京ドームでの「EXILE ATSUSHI LIVE TOUR 2016 "IT'S SHOW TIME!!"」を見たからなのだ。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる