ニューロティカ・クラウドファンディング第2弾インタビュー
ニューロティカ&bambooが考える、老舗バンドこそクラウドファンディングを使うべき理由
結成から32年を迎えた今も精力的に活動を続けるパンクロックバンド・ニューロティカが、『CAMPFIRE』にてクラウドファンディングプロジェクト『新宿アルタ前でフリーライブをやるぞプロジェクト!「アルタdeニューロティカ」』に挑戦している。同プロジェクトは、9月25日に新宿アルタ前広場を借りてフリーライブを行なうというもので、現在設定されているストレッチゴールを達成した場合は現場での音源配布も実施される。ニューロティカは2014年に『ニューロティカ結成30周年記念ドキュメンタリー映画 「あっちゃん」制作計画』をサクセスさせ、大きな反響を呼んだが、今回はどのような経緯でプロジェクトが立ち上げられたのか。メンバー4人とキュレーターとして関与するmilktubのbambooに訊いたところ、老舗インディーズパンクロックバンドだからこそクラウドファンディングを使うべき理由や2度目の挑戦をしたきっかけ、今後の状況予測にまで話は及んだ。(編集部)
「前回プロジェクトはライブより映画館にお客さんが集まった」(JAMES)
――まずはあらためてニューロティカとbambooさんの関係性について聞かせてください。
NABO:bambooは俺らのファンで後輩で奴隷です(笑)。たしか、俺らと会う前に一回あっちゃん(イノウエアツシ)と会ってたんだよね?
bamboo:そうなんです。インディーズ時代にはずっとライブハウスで見ていたんですが、うちが作ったゲーム(『キラ☆キラ 〜Rock'n'RollShow〜』)へニューロティカ先輩に出て欲しくて。あっちゃんにお願いしに行ったんですけど……プレイステーションのことを全くわかってくれなくて(笑)。メンバーの皆さんには改めて代官山のライブハウスへ行って、顔を合わせてご挨拶しました。
KATARU:そのときは楽屋へ急に目のギラギラした人がゲームの話をしにやってきたわけだから、意味が全くわからなくて(笑)。
イノウエアツシ(以下、アツシ):こいつに騙されちゃいけねえなと思っちゃったよね(笑)。
bamboo:あっちゃんから伝わってるんだろうなと思ったら、全然伝わってなくて(笑)。とにかく必死でしたね。そこから交友があって、対バンさせていただいたり、一緒にスプリットのシングル作らせてもらったりして、今では一緒にニコ生をやるような関係になりました。
――bambooさんはニューロティカが前回campfireでサクセスさせたクラウドファンディングのプロジェクト(https://camp-fire.jp/projects/view/989)にも関わっているとか。
NABO:これまでは俺がバンドの映像回りをまとめてたんだけど、30周年を記念して映画を作ろうということになって。ただ制作資金の問題とかもあって、その1年くらい前にbambooからクラウドファンディングについて聞いたことを覚えていたから、ちょうどいいかなと思って相談したのがきっかけだね。
bamboo:そうなんです。僕がもともと自分の事業や後輩バンドの支援にクラウドファンディングを使ってまして、いまは10案件サクセスして、調達したのは総額で約1億円ほどなんですよ。で、NABOさんから相談を受けたので、そのプロジェクトが実現可能か、最初から最後まできちんと成立するかという判断をしたのち、キュレーターとして参加することになりました。
KATARU:ファンであり総監督的な立ち位置だよね。
NABO:俺らはbambooに対して本当に信用を置いているから、実際これをクラウドファンディングでやっていいのか、というところから相談してるんですよ。これはやめた方がいいですよと言われたら多分やらないし、ここが足りない、あれが足りないというのも遠慮なく言ってくれるから。
bamboo:先輩と自分の看板がかかってて、なおかつニューロティカは大ファンのバンドじゃないですか。成功させないわけにはいかないし、交換条件として「映画に出させてください」ということを強くお願いしました(笑)。
――映画を作りたいと言われた時は成功すると思いましたか?
bamboo:クラウドファンディング向きだとは思いましたし、成功するという確信はありました。でも、これだけ支援金が集まることは想像つかず、追加で全国上映という「やれたらいいよね」と考えていたこともできるようになりました。あとは、カンヌにまだ呼ばれてないくらいですかね(笑)。
NABO:「英語の字幕を作ろう」って話もあったよね。
bamboo:字幕を作っても配信するところがないので、インタビューを見た動画ストリーミングサービスの方から声がかかるのを待ちます(笑)。
――bambooさんはこれまでも、自身の事業でプロジェクトを手掛けられてきたということですが、そもそも、クラウドファンディングに着目したきっかけは?
bamboo:僕はゲーム会社も経営しながらミュージシャンとしても活動していますが、5年前くらいに、Kickstarterをチェックしていて、「これは俺らみたいな商売にとっては、すごいいい仕組みなんじゃないか」と感じていたんです。その後CAMPFIREが日本で立ち上がったので、まずは自分で主催ライブイベント『KICK START GENERATION』の映像作品化に挑戦し、986万円の調達に成功しました。そこからゲームの開発費を集めたり、海外公演での活動費を支援してもらったり、音楽畑の人がやるようなことは、大抵川上から川下までそのなかでトライしました。そこで気づいたのは、これは先行販売みたいな感じで、借金ではないということ。インディペンデントでやっているバンドやクリエイターは、生きていくお金もままならないくらいで、映画製作やイベント企画は資金的なリスクが高い。それを緩和して、シーンを活性化させるには、すごくいい仕組みだと思ったんです。
――メンバーのみなさんは実際にひとつのプロジェクトをサクセスしてみて、何を感じたのでしょう。
KATARU:一番最初はやっぱり「お金を集める」という行為への戸惑いはありましたよ。とくにあっちゃんがそうだったと思う。よくわかってなかったという部分もあるんですけど(笑)。
NABO:数年前に、バンド界隈で「株主」みたいな感じで、出資してもらって成功したら戻ってくるみたいな仕組みが立ち上がりそうになったことがあって。それはあまり上手くいかなかったのを傍から見ていたので、不安だったことは間違いいないね。
アツシ:結果、多額のご支援をしていただいて、ありがたいとともにビックリという気持ちも強くて。一瞬だけどうしていいのかわからなくなりましたね。
NABO:予想以上に資金が集まってありがたかったですし、色々なことができました。その反面、映画のプロジェクトを立ち上げた当時は、CAMPFIREの手数料が今より高かった(20%。現在は5%に削減)から、「自分のお金の20%が関係ないところにいっちゃう」と嫌がる人や「直接銀行に振り込みたい」という声も多かった。だけど、CAMPFIREを使ったからこそ、話題になった部分もあるので、これを使ってなかったらそもそも人が集まっていなかったのかもしれません。
――作品自体もかなりプライベートのところまで曝け出していて、あれでアツシさんの人となりを知った方も多かったんじゃないかと思います。
JAMES:ライブより映画館にお客さんが集まりましたもんね(笑)。
NABO:地方でライブやっても集まらないような人数が来てくれていてびっくりしましたね。
bamboo:今までどこに居たんだよ! という人数の差でしたからね。
KATARU:座ってゆっくり見たいんだと思うよ(笑)。