「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第28回 『IDOL NEWSING LIVE 2』
アプガ、アイルネ、吉田凜音、ブクガ、ひめとまほう……混沌と化した『IDOL NEWSING LIVE 2』をレポート
2016年7月22日、新宿BLAZEで『IDOL NEWSING LIVE 2』が開催された。このイベントは、アイドル専門ライターの岡島紳士が制作しているアイドルDVDマガジン『IDOL NEWSING』が主催。今回は、『IDOL NEWSING vol.2』の発売を記念して開催された。
2015年4月12日に開催された『IDOL NEWSING LIVE 1.5』は代官山LOOPでの開催だったが、今回は新宿BLAZEへと一気にスケールアップ。アップアップガールズ(仮)、アイドルネッサンス、吉田凜音、Maison book girl、ひめとまほう、里咲りさ、りりか、NEWKIDSCREWが出演した。『IDOL NEWSING vol.2』に登場していたり、ゆかりがあったりする人々ばかりだ。
オープニング・アクトとして出演したNEWKIDSCREWは、「IDOL NEWSING vol.2」で大きな話題を呼んだ吉田凜音の「りんねラップ」をプロデュースしたE TICKET PRODUCTIONが、NEWKIDS、岡島紳士とともに結成したユニット。ふだんはステージに上がるのはE TICKET PRODUCTIONとNEWKIDSの2人だけだが、この日はなぜか男性ばかり9人もステージに上がったため、会場の雰囲気も一気に微妙なものに。E TICKET PRODUCTIONとNEWKIDSによる熱いラップと、「かわいい女の子を見にきたのになぜおっさんだらけのステージを見なければならないのだ」というフロアの温度差は、なかなか見ることができないほど絶望的なものだった。
まばらな拍手を受けてNEWKIDSCREWがステージを去ると、モデル、女優として活躍するりりかが登場。まるで救世主が現れたかのように、会場は一気に盛りあがりだした。オーバーオールを着て、首にスカーフを巻いたりりかは、さながら往年の広末涼子。しかも、会場に流れ出したのは、広末涼子の「MajiでKoiする5秒前」だったのだ……! 「かんぺ」と大きく書かれたカンペを手にしたりりかは、挨拶や自己紹介、物販案内を織り交ぜながら熱唱。実はりりかがライブで歌うのは初めてで、「フレッシュ」という言葉では片づけられないほどの魅力を感じさせた。
ひめとまほうは、地下アイドルの姫乃たまと、漫画家の西島大介の別名義である「DJまほうつかい」によるユニット。西島大介は広島県在住であるため、ふたり揃ってライブをすること自体が珍しい。
ひめとまほうは「コンテンポラリー・ポップ・ユニット」と名乗っている。DJまほうつかいによる楽曲とサウンドはどこか格調高く、ときに歌い、ときにセリフを言い、ときに踊る姫乃たまと不思議な空間を生み出していた。
姫乃たまは、「イルカ、クジラ、イルカ、クジラ、イルクジ、イルクジ、イルクジモデル、イルクジモデルのG-SHOCK」というコールを観客にさせていたが、一生懸命メモをしていた私にもどういう意味なのかよくわからなかった。かと思うと、キーボードを激しく演奏した末に、突然ステージを去るDJまほうつかい。次の曲を姫乃たまが歌っていると、戻ってきたDJまほうつかいはタオルを振るなどのパフォーマンスをし始め、最終的にはフロアに浮き輪を投げていた。これがコンテンポラリー……!
里咲りさは、ひょうきん者ならではの軽妙なトークからスタート。しかし、「カタルカストロ」を歌いだすと、会場の空気は一変。恋愛の機微を生々しく描いた歌詞を、ときに激しく、ときに艶っぽく歌うヴォーカルの表現力の豊かさが見事だった。
さらにMCでは、メジャー・デビューの話が来たものの、儲からなくなるから断ったというエピソードを披露。次のアルバムも、自身のレーベルから発売するそうだ。アコースティック・ギターの弾き語りで歌われた新曲「Little Bee」は、本人が言う通りJ-POP感に満ちている楽曲。弾き語りでは「YUKIのようだ」と感じたほどだ。しかし、物販で売られているCD-Rに収録されているヴァージョンの「Little Bee」は、里咲りさのヴォーカルが弾き語りとはまるで異なる感触なので、音源でもぜひ聴いてほしい。
Maison book girlが出演したのは、プロデューサーのサクライケンタが『IDOL NEWSING vol.2』で音楽を担当しているからだ。暗く淡い衣装を着て、変拍子で歌い踊るMaison book girlは、どこか聖性を帯びているかのような不思議な存在にも見えた。Maison book girlのライブは結成当初から幾度となく見ているのに、その謎はどんどん深まっているような感覚にも陥る。
自己紹介もなく楽曲だけで持ち時間を使い切ったMaison book girl。彼女たちのステージでは、たとえばコショージメグミと和田輪、あるいは井上唯と矢川葵といった、ふたり一組で歌うパートでの声質の組み合わせまで考え抜かれていると感じた。「裏切られて 裏切られて 裏切るの いつも」。そんな歌詞の楽曲で、Maison book girlのステージは終わった。