さユり ワンマンライブ『ミカヅキの航海』レポート
「私は生きるために歌いに来ました」 さユりが『ミカヅキの航海』で辿り着いた場所
「私は後悔が多い人間です。もう二度と帰って来ないものや、自分で捨ててしまったものに思いを馳せたりしながら生きてきました。私の曲は悲しい気持ちから生まれた曲が多いです。だから、もしその後悔がなかったら私は今ある曲を作ってなくて、あなたも私を知らないままの全然違う未来だったかもしれない。私の歌を必要としてくれたあなたのおかげで私は私の過去に意味を持たせることができたって思います。ありがとう」、さユりらしい言葉でファンへの感謝の気持ちを述べ深々とお辞儀をすると、透過スクリーンに投影されたさユりの頭上にキラキラと輝く満月から血が流れ出し、次第にミカヅキへと変貌していく。続けてさユりは「私たちは欠けたところから始まります。欠けたものから何かを生み出せる力があると思います。大丈夫。あなたはあなたの“それでも”の先に進んでください。私も“それでも”の先に進みます」と話し、メジャーデビュー曲「ミカヅキ」を披露した。「ミカヅキ」は全てのサビ頭が<それでも>のフレーズから始まる。<それでも 誰かに見つけて欲しくて><それでも あなたとおんなじ景色が また見たいから>。さユりは、過去に後悔し、藻掻きながらも、“それでも”と自問自答し前に進んできたのだろう。「ミカヅキ」を披露したあと、さユりの頭上には投影された綺麗な満月が輝いていた。
アンコールでは、メジャーデビュー前に着ていたポンチョに着替えたさユりが、トランクとギターケースを持って登場。路上ライブ時代の弾き語りスタイルを披露しようとすると、6月7日に20歳の誕生日を迎えたさユりに向け、ファンから祝福の言葉を送られて涙を流す一幕も。「最近作った曲をやろうと思います」、そう言って披露したのは新曲の「birthday song」。20歳を迎えた自身も歌詞で描きながら歌う。最後に「いつか、どうでもいい。もう死にたいって思った時に、それでも、もうちょっとだけ生きてもいいかなって思える朝が来たらいいなって思います。あなたが温かい朝を迎えられますように」、そう言い切り路上ライブから披露し続けている「夜明けの詩」を熱唱した。筆者は、一度だけさユりがSHIBUYA TSUTAYAの前で路上ライブをしているのを観たことがある。メジャーデビューシングル『ミカヅキ』の店着日、2015年8月25日。すでにその頃には、人が集まり過ぎて「ミカヅキ」1曲を披露して中止というブレイク前夜であったのを鮮烈に覚えている。さユりの一番の魅力は、ぶれることなく真っ直ぐに突き抜けるような歌声だが、それをダイレクトに感じることができるのが路上ライブであり、さユりの原点なのだと言える。
ここで再びライブの1曲目「来世で会おう」に話を戻す。この曲の歌い始めは<過去は変えられないさって>という歌詞であるが、『ミカヅキの航海』はさユりが過去を肯定して始まることになる。2カ月前に観た渋谷WWWでのさユりと比べて、一回りも二回りもアーティストとして大きく見えた。
(取材・文=渡辺彰浩)
■セットリスト
4月23日(土)渋谷WWW
さユり『ミカヅキの航海』
1.来世で会おう
2.蜂と見世物(サーカス)
3.オーロラソース
4.BANDAGE
5.光と闇
6.knot
7.人間椅子
8.ふうせん
9.それは小さな光のような
10.スーサイドさかな
11.るーららるーらーるららるーらー
12.ちよこれいと
13.ミカヅキ
EN14.酸欠少女
EN15.夜明けの詩
6月24日(金)東京キネマ倶楽部
さユり『ミカヅキの航海』ワンマン追加公演
1.来世で会おう
2.蜂と見世物(サーカス)
3.オーロラソース
4.ネバーランド
5.光と闇
6.knot
7.それは小さな光のような
8.人間椅子
9.ふうせん
10.スーサイドさかな
11.るーららるーらーるららるーらー
12.ちよこれいと
13.ミカヅキ
EN14.birthday song
EN15.夜明けの詩
■リリース情報
配信限定4曲入りEP「るーららるーらーるららるーらー」
2016年6月24日(金)配信リリース
<収録曲>
1.るーららるーらーるららるーらー
2.cigarette-弾き語りver.-
3.ヒト-弾き語りver.-
4.来世で会おう-弾き語りver.-
iTunes限定特典:さユりDigital PonchoBook(PDF)
■ライブ情報
さユり”ミカヅキの航海”追加公演
8月26日(金)福岡・DRUM Be-1
開場18:00/開演 18:30
チケット一般発売:7月16日