森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.4
ブンブン、水カン、AKLO、レキシ、miwa……6月22日発売新譜の注目作は?
その週のリリース作品の中から、押さえておきたい新譜をご紹介する連載「本日、フラゲ日!」。6月22日リリースからは、BOOM BOOM SATELLITES、水曜日のカンパネラ、AKLO、レキシ、miwaをピックアップ。ライターの森朋之氏が、それぞれの特徴とともに、楽曲の聴きどころを解説します。(編集部)
BOOM BOOM SATELLITES『LAY YOUR HANDS ON ME』(SG)
形骸化したシステムにアゲインストして、徹底的に個として生きようとする姿勢。そして、激しく移り変わるダンスミュージックの潮流にアジャストし、圧倒的な高揚感へと導くサウンド・プロダクション。反抗と順応という真逆のテーマを同時に体現しながら、常に刺激的な音楽を生み出し続けてきたBOOM BOOM SATELLITESは最後の作品でも自らのスタイルをしっかりと貫いて見せた。特に印象に残るのは、全編を通し、清々しいまでの開放感に溢れていること。すべての葛藤や苦しみから脱却し、すべてのリスナーの感情を浄化してくれるようなサウンド、これまでの作品のなかでもっとも朗らかな手触りを持ったボーカルからは“ここから新しい幸福が始まる”という予感に満ちている。新しい作品が聴けない、興奮と覚醒が同時に押し寄せてくるステージがもう見られないのは本当に残念だが、彼らの音楽はこの先もずっと多くのオーディエンスを魅了し続けていくことになるだろう。
水曜日のカンパネラ『UMA』(EP)
意味やメッセージを丁寧に除外して、コムアイ嬢の声質、語感の良さに重点を置いたリリックが水曜日のカンパネラのひとつの特徴だと思うのだが、ようやくリリースされたメジャー1st EPにおいてもそのスタンスはキープされ(そもそもタイトルが“未確認生物”なので、存在するのかどうかわからないし、メッセージの込めようがない)、何度聴いても歌詞の内容に捉われることなく、ひたすらエレクトロ・ミュージックとしてのクオリティだけが楽しめる作品に仕上がっている。バウンシーな電子ビートと無機質なフロウがひとつになった「ツチノコ」、オーガニックなグルーヴを取り入れた「ユニコ」、80年代後半のハウスミュージックを想起させるような「フェニックス」、濃密なサイケデリアが堪能できる「バク」など、独創的なアイデアを反映させたトラックメイクもきわめて魅力的。こうやって言葉に依存しないグループが増えていけば、日本のポップミュージックはもう少し豊かになると思う。
AKLO『Outside the Frame』(AL)
「フリースタイルダンジョン」が流行ったり「ユリイカ」誌が特集を組んだり各方面から盛り上がりを見せている“日本語ラップ”だが、AKLOの3rdアルバムを聴けば、この人はとっくに“日本語ラップ”なんていうカテゴリーから逸脱しているんだなということが改めて実感できるはず。いや、もちろんAKLOも日本語を使うラッパーであることは間違いないのだが、英語の混ぜ方、韻の踏み方、フロウの作り方を含め、声を音楽的に使うセンスとテクニックが飛びぬけているのだ。これは個人的な聴き方ではあるが、リリックの内容以前に、ダンスミュージックとしての魅力がなければどうしても聴けない。“日本語ラップ”なんて言い方はもうやめて(だって日本語ロックとか日本語ポップスなんて言わないですから)、本作のように音楽としてのクオリティとスタイリッシュなフロウが堪能できる作品が増えれば、自ずと日本のヒップホップ・マーケットも拡大していくのではないだろうか。