Uruの歌声は世代を超える? 柴那典が考察する、ネット経由の新たなブレイクの形

Uruの歌が世代を超える理由

 モノトーンに統一した映像の雰囲気も大きいと思うが、こうして様々なカバー動画を見ると、彼女の歌声が持つ大きな特性が伝わってくる。やわらかく、繊細な声。それが人気拡大の最大の理由だろう。それも、同世代の女子に等身大の共感を獲得するというよりも、世代を超えて広まっていくタイプだ。

 そして、Uruが無名な状態から歌声の力だけで「世代を超えた」とするなら、それは特筆すべきことと言えるのではないだろうか。

 というのも、ニコニコ動画の「歌ってみた」にしても、YouTuberにしても、人気を拡大する歌い手のファンは同世代の若い層が中心であることが多いから。最近10代女子に広まっている音楽アプリ「nana」にしてもそうだ。イーライ・パリサーが『閉じこもるインターネット』で指摘したように、ネットには「世界中に発信できる」プラットフォームとしての原理が備わっている一方、その実情はそれぞれがパーソナライズされた情報を受け取る小さなコミュニティの中での発信に収束しつつある。

 そして、“ネット的”という言葉の持つ内実も変わりつつある。00年代はニコ動的なオタクカルチャー、最近はSnapchatやミックスちゃんねる的なガールズカルチャーなど「特定の層の嗜好=ネット的」と捉えるイメージは根強くあるが、いまやインターネットは子供から中高年、老人までが当たり前に使うユニバーサルなアーキテクチャになっている。

 そんな中、Uruのしっとりとした歌声、そしてセカオワと中島みゆきを共に歌いこなすセンスが広い世代に伝わっているというのは、「ネット経由のブレイク」というストーリーの新しい一例と言うことができるかもしれない。

 デビューシングル「星の中の君」は、ピアノとストリングスを配した壮大なバラードナンバーで、こうしたUruのアーティスト性を活かした仕上がりとなっている。

【Official】Uru 『星の中の君』YouTube ver.

 カップリングの制作陣も豪華だ。「WORKAHOLIC」を手がけた蔦谷好位置、ピアノバラード「すなお」を手がけた武部聡志、ともに彼女の持つ声質を最大限に引き出すようなプロデュースワークを行っている。

 目立つフックや派手なギミックが仕掛けられているわけではない。が、その声が持つ存在感は、メジャーシーンにおいても確実に広まっていくだけのポテンシャルを持っている。期待したい。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

■リリース情報
『星の中の君(初回限定盤)』
発売:2016年6月15日
映画「夏美のホタル」主題歌
【初回生産限定盤 (CD+DVD)】 ¥1,800(税込)
・特典
Uruデザイン オリジナルポストカード
【通常盤 (CD)】 ¥1,200(税込)
※初回盤、通常盤ともに初回プレス分へ
Uru Live「 SS 」チケット先行受付シリアルナンバー封入
〈収録曲〉
(CD)
1.星の中の君 (映画「夏美のホタル」主題歌)
作詞:Hidenori , Uru/作曲・編曲:Hidenori , トオミ ヨウ
2.WORKAHOLIC
作詞:Uru/作曲:Daniel Kim , mayu wakisaka/編曲:蔦谷好位置
3.すなお
作詞・作曲:Uru/編曲:武部聡志
4.星の中の君 –instrumental-
5.WORKAHOLIC -instrumental-
6.すなお -instrumental-

(DVD)
星の中の君 MUSIC VIDEO

■映画情報
6月11日全国ロードショー
映画「夏美のホタル」
原作:森沢明夫「夏美のホタル」(角川文庫刊)
監督:廣木隆一
出演:有村架純
工藤阿須加 淵上泰史 村上虹郎
中村優子 小林薫 光石 研 吉行和子
【映画「夏美のホタル」公式サイト】
http://natsumi-hotaru.com

■ライブ情報
Uru Live「 SS 」
【日時】
9月10日(土) 開場17:45 開演18:30
9月11日(日) 開場16:45 開演17:30
【会場】
東京グローブ座
http://www.tglobe.net

■オフィシャルサイト
http://uru-official.com/

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