1stシングル『夢日和』インタビュー
瀬川あやかが、音楽と看護師を両立する理由「誰かの力になるという点では、どちらも違わない」
“現役看護師のシンガーソングライター”瀬川あやかが、メジャーデビューを果たした。2011年に看護師になるために上京した彼女は、病院に勤務しながら弾き語りのライブを年間50本以上のペースで行い、シンガーソングライターとしての個性を少しずつ培ってきた。彼女の特徴であるポジティブでポップな楽曲、明るくて伸びやかなボーカルは、1stシングル『夢日和』からもしっかりと感じ取ってもらえるはずだ。
今回のインタビューでは、看護師とアーティスト活動を両立させてきたこれまでのキャリア、シングル『夢日和』を中心に語ってもらった。その健康的で前向きなキャラクターは、シンガーソングライターとしての彼女の魅力に直結していると思う。(森朋之)
看護師の実習中に音楽の力を感じられる場面に出会った
——6月15日にメジャー1stシングル『夢日和』がリリースされます。デビューするという実感はありますか?
瀬川:凄くワクワクしてるんですけど、実感はあんまりないですね、正直言って(笑)。いろんな情報が解禁になって、こういうインタビューも増えてくると「そうか、デビューするんだな」って思ったりはしますけど、まだ夢みたいです。
——“現役看護師のシンガーソングライター”ということですでに話題となっていますが、楽曲を作り始めたのはいつ頃なんですか?
瀬川:まだそんなに経ってなくて、大学時代からなんですよ。歌手になりたいという気持ちは小さい頃からあったんです。モーニング娘。さんをテレビで見て「こういうふうに歌って踊るのって、素敵だな」って。でも、私の地元(北海道富良野市)はすごく田舎だから「歌手になりたい」なんて言うとポカンとされちゃうんですよね。バカにされるとかではなくて、「歌手なんて、実際になれるものなの?」って感じで。
——富良野にいた頃は、まったく音楽活動はしてなかった?
瀬川:してないですね。地元のカラオケ大会に出るとか、それくらいで。あ、でも、5歳くらいからピアノを習ってたんです。高校に入ったら続けられなくなったんですけどね。旭川の高校に通ってたんですけど、通学に往復4時間かかってたので。たとえばダンスを習いたいって思っても旭川まで行くしかないから、ちょっと難しいんですよね。
——確かに歌手になるなんて現実味がないのかも。
瀬川:そうですね。看護師になるという目標もあったから、みんなの前では「看護師になりたい」って言って、裏の夢として歌手もあるっていう(笑)。高校を卒業して看護師になるために東京に来て、大学のミスキャンパスコンテストに出たことをきっかけにいまの事務所との出会いがあったんですけど、「(音楽活動の)機会を与えてもらえるのであれば、やってみてもいいのかな?」と思うようになって。ただ「どっちにしよう?」と迷ってる間に看護師になるための実習期間になって、そのときは1回、音楽活動のほうを諦めようと思ったんです。事務所にも「看護師になります」って言って、自分のなかでも決心がついたというか…。でも、実習中に音楽の力を感じられる場面に出会ったんですよね。寝たきりに近くて、身体を動かすのが大変な患者様がいらっしゃったんですが、音楽を聴いたり、歌うことで、自然と体が動きやすくなって。
——医療の現場で音楽のパワーを目の当たりにした、と。
瀬川:そのときに思ったんですよね。「音楽と看護師、どっちにしよう?」ってずっと考えていたけど、誰かのためを思って、誰かの力になるという点では、どちらもぜんぜん違わないなって。曲を書くようになったのも、そのときからなんです。誰かのことを思って歌うのであれば、自分の言葉、自分のメロディじゃないと伝わらないなと思ったから、だったら試しに書いてみようって。
——最初から音楽の方向が決まっていたんですね。
瀬川:そうですね。自分が歌って気持ちいいっていうだけではダメというか。最初に書いた曲は「はじまり」という曲なんですけど、まさにそのときの気持ちを歌ってるんです。「イヤなことも楽しいこともたくさんあるだろうけど、初心をすぐ思い返せるように、いま思っていることをそのまま書こう」と思って。<声に出して 夢を描こう>という歌詞があるんですけど、ずっと言えなかった夢を声に出し始めたときだからこそ書けたと思うんですよね。いま「はじまり」を聴き返してみても——初めて作った曲だから、ダメなところもたくさんあるんですけど(笑)——いまは書けない曲だなって思うし。
——看護師とシンガーソングライターを両立すると決めてからは、病院での勤務とライブの日々ですか?
瀬川:はい。看護師として勤務し始めたのは昨年なんですけど、最初はもちろんわからないことだらけだし、探り探りという状況で。音楽のほうも曲を作り始めたばかりだったし…。でも、だからこそ「自分にやれるのは努力しかない」と思えたんですよ。とにかくたくさん曲を生み出して、ライブの数も増やして。経験を重ねて成長するしかない! っていう。それは看護師としても同じですね。
——努力家なんですね!
基本、負けず嫌いなんですよ(笑)。いまの活動はまわりのみなさんに助けてもらえるから出来ることですけど、結局、がんばらないといけないのは自分ですからね。病院のほうにも、就職するときに「音楽もがんばりたいと思っています」とお伝えして、それも理解していただいているので。