anderlustが小林武史と目指す“枠にとらわれない”ポップス「懐かしいけど新しい感覚を」

anderlustの目指す“枠にとらわれないポップス”

「パッと聴くと懐かしく響くのですが、聴き込むとかなり捻っている」(西塚)

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――小林さんとのやり取りで学んだ部分のうち、大きかったと思えることはなんでしょうか。

越野:毎回新しい扉を開いてもらうような感覚ですし、音楽業界で長年トッププロデューサーとして活躍している小林さんと仕事をするのは、まるで音楽の歴史を読ませてもらっているような気分になります。

――そのなかで生まれた3曲を今回は収録しているわけですね。それぞれの楽曲は、どの時期に制作しましたか?

越野:カップリングの「風船ep.1」は、私が作曲活動を始めた初期のころにできた曲で。自分の中ではヒドゥン(隠し)トラック扱いだったのですが、小林さんにすごく気に入っていただいて、今回収録することになりました。「帰り道」は、小林さんと曲作りをするなかで、映画(『あやしい彼女』)主題歌のお話があって。「帰り道」のデモを渡したところ、水田(伸生)監督にもすごく気に入っていただけたんです。「A.I.」は比較的最近ですね。

anderlust 『帰り道』Short Ver.

――表題曲「帰り道」には、<懐かしい気持ち>というワードが使われていますが、楽曲自体もどこか1990年代後半から2000年代初頭の懐かしさを感じさせるものに仕上がっていますね。

越野:そうですね。この曲はまさに、私が“懐かしい気持ち”を音楽として具体的にしたくて書き始めたもので。ただ、懐かしい気持ちだけではなく、聴く方にとっては“懐かしいけど新しい”という感覚になってもらいたくて、かなり凝って作りました。

西塚:パッと聴くと懐かしく響くのですが、聴き込むとかなり捻っているメロディですね(笑)。プレイヤーとしては、そこに切なさを音として加えられるように演奏しました。

――この曲は余韻の残し方が絶妙だなと感じました。確かに懐かしさもありながら、ラストサビでの転調などに、越野さんのいう“新しさ”を感じます。良い具合に折衷されてるといいますか。

越野:その転調部分は、一番気付いてほしかったポイントですね。言葉にすると、“終わりがどこかわからない”という部分を作りたかったので。実際に曲を書きながらも「これでフィニッシュしてもいいかな?」とギリギリまで悩んでいましたし、そういう気持ちも組み込まれているかもしれません(笑)。

――「風船ep.1」は、越野さんが活動初期に作ったということですが、確かに「帰り道」よりはシンプルな曲構成であり、ポップス然としたものになっていると感じました。

越野:この曲は、昔見た“大量のカラフルな風船が空に舞い上がっていく”という光景を思い出しながら書きました。最初はブラスを入れたりして、パレードっぽく作っていたのですが、小林さんがそれを上手く再構築して、ポップスとして完成させてくれました。

――デモバージョンも聴いてみたいですね。

越野:いつかどこかで披露できたら……と思っています。

西塚:この曲に関しては、J-POPの王道というか、anderlust的なJ-POPの形だと感じています。

――2人にとっての“J-POP的な感覚”というのは、何をもってそう定義できるのでしょうか。

西塚:J-POPが成り立つまでの間って、色々なジャンルが混ざり合っていたと思うんです。でも、今は一般的にどんなジャンルが混ざってようと、日本語で歌われていて、耳馴染みの良いものや、すんなり入ってくるものであればJ-POPになる、という認識ですね。今回の曲ではそれが実現できたと思います。

越野:私は……とくにそういう枠を意識したことがないですね。幼いころは洋楽ばかり聴いてきたので、自分にとって耳馴染みが良い音楽は海外の音楽なんです。そんな私が日本語で曲を作ると、anderlustにとっての“らしさ”が生まれるのかもしれない。

――それがまた、聴き手からすると新鮮に聴こえて、引っ掛かりのある部分を生んでいるのかもしれません。そして、これまでの2曲とは毛色が違うデジタルロック調の「A.I.」は、作品の中で異色ともいえる1曲です。

越野:「A.I.」は、私の好きなバンドのひとつであるパラモアをイメージした楽曲です。イントロを含めての不思議に聴こえるアレンジは、歌詞のテーマである人工知能のSF感をベースにしたものなんですよ。

――こっちが越野さんにとっての核、というわけではないですよね。

越野:はい。どちらも自分から発信されたものなので、3曲すべてが核といえますね。あ、そういうところはブラーの影響といえるのかもしれません(笑)。「Song 2」から「Coffee And TV」まで幅広く作るところとか。今、話していて気が付きました。

――(笑)。いずれも広くインプットしてきたなかで生まれたものであり、自分の一部というわけですね。

越野:私、音楽に限らず、いろんなところの中から良いと思えるものを見つけるのが好きで。趣味も沢山あるし、本も映画もアートも大好きですし、普通の19歳と比べたら、色々なものをインプットしてきた自信はあります。飽きっぽいわけじゃなくて、探す行為自体も、見つけたものを自分の“フェイバリットリスト”にどんどん入れていくのも好きなんですよね。それがどんどん溜まっていって、自分の引き出しが増えていく感覚が楽しいというか。

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