秋元康と亀田誠治が“ダンス偏重のJ-POP”について語りあう 「『流行歌』であり『歌』なんだということを叫び続けたい」
音楽プロデューサーの亀田誠治がJ-POPのヒット曲を分析するテレビ番組『亀田音楽専門学校 SEASON 3』(NHK Eテレ)。1月29日放送分の最終回では、星野源をゲスト講師に迎え、「J-POPの現在 そして未来」をテーマに講義を行なった。
番組冒頭では、2006年から2015年までのCDシングル年間ヒットチャートTOP10を紹介し、2006年以降はジャニーズやAKB48グループがチャートを席巻していると説明。星野は、印象に残っている曲として、2007年に最も売れたシングル曲、秋川雅史「千の風になって」を挙げ「今でもお風呂で気がつけば歌いたくなる」と述べた。また、番組では、2005年に「iTunes Music Store」が日本でサービスを開始した後に、2008年にiPhoneが販売開始するなど、スマートフォンの登場によって音楽を気軽に試聴・購入できるようになったと紹介。CDの売り上げが減少していった2008年以降からコンサートの動員が2倍以上に増えていることについて、亀田は「音楽の楽しみ方がCD、有料配信、ライブと楽しみ方が多様化した時代」とコメントした。
踊る! J-POP
亀田は、2000年代後半から2010年代にかけて、音楽には「メロディー」「リズム」「ハーモニー」の3要素に「ダンス」が加わった時代だとも熱弁。その例としてEXILE「Rising Sun」、ゴールデンボンバー「女々しくて」、AKB48「恋するフォーチュンクッキー」、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「R.Y.U.S.E.I.」を挙げた。星野は「R.Y.U.S.E.I.」における特徴的な振付“ランニングマン”について「食器を洗い終えた時や洗濯物を全部畳んだ後にやりたくなる」と振りを交えながら話し、スタジオが笑いに包まれる一幕も。続けて亀田は「イントロや間奏を、アーティストが踊るためのパートに進化させている」と述べ、星野のアルバム『YELLOW DANCER』収録曲「時よ」のダンスパートを引き合いに出した。星野は当初「聴いている人が動いてなくても、心の中が動く音楽をやろうというのを目指していた」そうだが、「どんどんフィジカルな方向に変わっていって、実際に自分の体が動くとか、お客さんが踊りたくなるとか。心も体も踊りたくなる音楽を作りたくなった」と、楽曲制作に対する意識の変化を明かした。
また、作詞家・秋元康に亀田がインタビューを行ったVTRでは、“踊るJ-POP”としてAKB48「ヘビーローテーション」、乃木坂46「君の名は希望」を紹介。亀田は「ポップスにおいて『踊る』や『踊り』はどんな意味があると思いますか?」と質問すると、秋元は「テレビというメディアが出てきたときが、『踊る』こと、つまり『見せる』ということの始まりだと思う」とコメント。続けて「2006年以降はコミュニケーションとしての『踊る』が出てきた。みんなSNSとかの個々になったから、せめて歌やカラオケとか、非日常の中だけはみんなで合わせることをしたくなったんだと思う」と考えを述べ、最後に「『一緒に何かをすること』が『歌の持つ役割』になった」と締めた。
番組中盤では、“踊るJ-POP”でほかに起きている現象として、Perfume「Cling Cling」、サカナクション「夜の踊り子」、KANA-BOON「盛者必衰の理、お断り」、きゃりーぱみゅぱみゅ「インベーダー インベーダー」を紹介し、音階のファ、シを抜いて情緒や郷愁感を感じさせる「ヨナ抜き音階」が使われているとコメント。亀田は星野の「時よ」にもヨナ抜き音階が使われていると話すと、星野は「あ、そうなんですか?」と返答し、スタジオに笑いが起こる一幕も。続けて亀田は「ダンスミュージックにヨナ抜き音階をトッピングすると、心が開放され踊りたくなる」と解説し、星野の代表曲「SUN」に話を繋げた。星野は「SUN」について、「マイケルジャクソンを意識して作った」と述べ、好きな楽曲であるマイケルジャクソン「ロック・ウィズ・ユー」を挙げて「どうにも腰が動いちゃう」と話すと、亀田が「僕のベースで腰が動いちゃうか判定してくれない?」と亀田のベースを星野が判定する展開に。亀田は「一緒に踊って一体感を感じることが重要になり、耳だけでなく全身で音楽を楽しむ時代、踊ることが重要な時代になった」とまとめた。