2015年『NHK紅白歌合戦』の注目ポイントは「戦後70年」「アニソン」「80年代アイドル」
今日午後7時15分から放送される66回目の『NHK紅白歌合戦』(以下、『紅白』)。今年はどのあたりが見どころなのか? 恒例化した感のある連続テレビ小説『あさが来た』の特別編、嵐と『スター・ウォーズ』のコラボ、V6、Perfumeらとディズニーのコラボなど目白押しの特別企画や制作側が用意しているという「びっくりするような演出」も楽しみだが、ここでは『紅白』の歴史も踏まえながら、今年の注目ポイントを大きく三つ挙げてみたい。
今年の『紅白』、テーマは「ザッツ、日本!ザッツ、紅白!」だ。「ザッツ(=これぞ)」な『紅白』を届けたいということだが、それをうたった公式サイトには「戦後70年、日本の心が、ここにある」という一文がみえる(http://www.nhk.or.jp/kouhaku/about/)。
「戦後70年」。これがまず今年の注目ポイントだろう。終戦の年の暮れに放送された『紅白音楽試合』がこの番組の原点であるという意味でも、「戦後70年」は『紅白』にとって避けて通れないテーマである。
すでに、女優の吉永小百合が「平和への祈り」をこめたメッセージをVTRで寄せることが発表されている。吉永は終戦の年に生まれ、かつて2005年の『紅白』で原爆詩の朗読をしたこともある。その意味で「戦後70年」にふさわしい人物でもある。
さらに、黒柳徹子の総合司会への起用にも同じような意味合いがあるだろう。今年82歳の黒柳は、戦争を体験した世代であると同時に、1953年のテレビ本放送開始と同時にNHK放送劇団の専属となって以来、ずっとテレビの第一線で活躍してきた唯一無二の存在、いわばテレビの戦後史の生き証人だ。『紅白』の司会も1958年以来5回(紅組では史上最多)を数え、今回の総合司会も含めれば6回目の「司会」となる。
だが言うまでもなく『紅白』は歌番組である。だから、何よりもまず歌で「戦後70年」を表現しなければならない。実際、今回の選曲にはそうした制作側の気持ちがよく表れている(http://www.nhk.or.jp/kouhaku/artists/)。
例えば、伍代夏子が『東京五輪音頭』(1963)、天童よしみが『人生一路』(1970)を歌う。それぞれ『紅白』の顔であった三波春夫と美空ひばりの代表曲だ。『東京五輪音頭』は史上最高視聴率81.4%を記録した1963年、つまり前の東京オリンピック開催の前年の『紅白』で『蛍の光』の代わりに出場歌手全員で歌われた。また『人生一路』は、30回記念の1979年の『紅白』に美空が特別出演した際に歌った楽曲でもある。
さらに対戦相手として細川たかしが『心のこり』(1975)、和田アキ子が『笑って許して』(1970)と初期の代表的ヒット曲を歌う。また石川さゆりの『津軽海峡・冬景色』(1977)に対し、五木ひろしは『千曲川』(1975)。いずれも二人の代表的ヒット曲であると同時に、過去にトリで歌われたことがある楽曲だ。
そしてトリ前には、今年限りで『紅白』からの「卒業」を表明している森進一が『おふくろさん』(1971)を、髙橋真梨子はペドロ&カプリシャス時代の1973年にヒットした『五番街のマリーへ』を『五番街のマリーへ2015』として歌うのも目を引く。