香月孝史が『アンダーライブ at 日本武道館』の意義を読み解く
乃木坂46のアンダーライブが成し遂げたことーー武道館公演が示した「歴史」と「進化」を読む
そのアンダーライブを盛り上げ、牽引してきたメンバーの一人、永島聖羅が17日のアンコール時に卒業を発表した。アンダーライブの足腰を支えるうえで大きな役割を果たした彼女がいなくなることは、乃木坂46のライブパフォーマンスにとって小さなことではない。また、アンダーライブを通じて発揮してきた彼女の実力を、さらに表に向けて投げかける機会を作ることがもっとできたのかもしれないとも考えてしまう。とはいえ、グループアイドルにとって卒業は、ほとんどの場合、必然でありまた唐突なものだ。乃木坂46はこれまで、メンバーの卒業とグループ内での明確な集大成とを、軌を一にして発表することが難しかった。その意味では、アンダーライブが大きく育ったことによって、初めて叶った卒業発表の仕方ではあるはずだ。乃木坂46のライブ面の成長を継続させ、さらに広い層へ魅せつけていくことが、グループと永島、双方にとっての財産になる。
アンダーライブは現在、乃木坂46というグループ内で大きな存在になり、段階としてもひとつの達成をみた。だとすれば、アンダーメンバーの躍動をそのまま、より表の舞台、より多くの人の耳目に伝えるには、既存のアンダーのあり方から次のフェーズに進めるかどうかが鍵になる。その時、次の一手としての予感を見せるのが、現行アンダーメンバーからのユニット・サンクエトワールだろう。選抜メンバーから切り出したユニットではなく、またアンダー全体で稼働するような流れとも異なるサンクエトワールは、アンダーメンバーをフィーチャーしてゆく際の、柔軟なあり方を示唆するものだ。
サンクエトワールは先に触れた中田や2期生の北野、寺田といった、直近のアンダーライブでキーになるポジションを担うメンバーのほか、2015年のアンダーライブの象徴といえる中元日芽香、そして7枚目シングル表題曲「バレッタ」でセンターを務めた堀未央奈を擁する。この2年間を通じてアンダーライブの中核を背負ってきた中元と、今年10月の4thシーズンで初めてアンダーライブに参加し、アンダーに選抜センター経験者という新たな風を送り込んだ堀のペアは対照的なルートを経つつ、ともに武道館ライブでもアンダーの顔にふさわしい役割を果たした。さらにサンクエトワールとしては2015年末、フリーライブなどのイベントもすでに動き出している。このユニットの育ち方次第では、アンダーの位置づけもまた違った形を見せるだろう。昨年の単なる反復にならずに2015年のアンダーライブが進化したのならば、また今年の素晴らしい躍進をただトレースするのではなく、2016年の発展形が見られれば望ましい。まずはサンクエトワールがその先鞭をつけるものになるのかもしれない。順風満帆に成果を出してきた一年だからこそ、そこからなお進んだネクストステージを発明することは難しい。しかしまた、それほどの成長を見せた乃木坂46だからこそ、その次の展開への期待値も高くなる。
■香月孝史(Twitter)
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。