乃木坂46が描いた“アンダー”の未来図 「サード・シーズン」で確立したブランド力を読む
4月14日からスタートした「乃木坂46 アンダーライブ サード・シーズン」は、19日の夜公演でファイナルを迎えた。およそ一年前、8thシングル『気づいたら片想い』の全国握手会後に開催されたアンダーメンバーによるライブは、目覚ましい速度で2014年の乃木坂46の目玉のひとつへと成長し、12月12日の有明コロシアムでのライブでその集大成を迎えた。それを踏まえた今回のサード・シーズン、乃木坂46のアンダーメンバーは、この一年で積み重ねてきた歴史と自信によって、組織としてまたひとつ別の段階に進んだように見える。今回のライブの特徴である、MCタイムを排したノンストップのセットリストも、そんな今の彼女たちのパワーや自信を示すものだろう。
昨年のアンダーメンバー大躍進の象徴だった伊藤万理華や齋藤飛鳥が、11thシングル『命は美しい』では選抜組に移った今回のメンバー構成の中で、アンダーのセンターを務めるのは中元日芽香。アイドル然とした振る舞いを志向しながら、同時に芯の強さを隠すことなく端々で表してきた中元をセンターに据え、その選抜組の表題曲「命は美しい」からアンダーライブは幕を開ける。控えめなパーソナリティと存在感の大きさが同居する選抜センターの西野七瀬とは大きく個性の異なる中元のセンターもまた頼もしく、「命は美しい」の楽曲としての強さを、選抜組とは別の彩りで表現する。アンダーライブ最終日の公演のアンコールMCで中元は、「選抜経験の少ない自分は、アンダーにとっての“新しい風”になってあげることができない」「けれどアンダーとしての時間を長く経験してきた自分にはみんなの気持ちがわかる。それが強みになれば」と、センターとしての思いを告白した。それは中元自身の意志を示すものであると同時に、アンダーライブが歴史を積み重ね、そのセンターポジションに立つ意味が重くなったことも示していたる。光の当たることの少ない非選抜メンバーの活動の場として萌芽したアンダーライブだったが、いまや乃木坂46のライブパートを支える、グループ全体にとっての重要な武器になった。
この一年でメンバーが築いてきたアンダーライブの充実度は、ライブ構成の要所要所にもうかがえる。序盤に設けられたメンバー紹介パートでは、一人一人ソロダンスを披露して個性を示す。そしてメンバー紹介パートが終わると、オリジナルでは白石麻衣と橋本奈々未が歌うデュオ曲「孤独兄弟」を10人構成でパフォーマンス。川村真洋と中田花奈を中心にした5対5のフォーメーションで、この曲に新鮮な解釈を与えてみせた。もともと乃木坂46の中でも目を引くパフォーマンスを見せる川村と中田は、このサード・シーズンでも動きでチームを引っ張った印象がある。スキルの方向性は互いに大きく違うが、この二人が中元日芽香、井上小百合、斉藤優里といった中央に立つメンバーの脇を支えることで、その見栄えはぐっと豊かになった。「孤独兄弟」の直後には中元を中心とした残りの10人が登場して「コウモリよ」のパフォーマンスに移る。「孤独兄弟」のメンバーに対抗するような勢いは、アンダーライブが単に持ち曲披露の場ではなく、アンダーメンバー内でも良い拮抗関係がつくられていることを見せつけるようで心地いい。