AIの楽曲には「愛」が通底しているーーデビュー15周年ベストアルバムから伝わる親近感
2000年のデビュー以来、日本のR&B界とJ-POP界を繋ぐ存在として第一線で活躍し続けるAIが、11月25日にデビュー15周年イヤーを飾るベストアルバム『THE BEST』をリリースする。昨年結婚し、今年8月に女児を出産した彼女。本作は出産前の彼女の歌声を集大成した貴重なマイルストーンでもある。まずはその収録曲を見ていこう。
5年前にもベスト盤『BEST A.I.』をリリースしているが、本作はそれ以降に発表された3枚のアルバム『THE LAST A.I』『INDEPENDENT』『MORIAGARO』からのナンバーを10曲収録、全体の半分以上を占める内容となっている。
ウィンターシーズンの訪れと共に街で流れ出す名曲「ハピネス」や、「FAKE feat. 安室奈美恵」「STRONGER feat. 加藤ミリヤ」といった話題のコラボ曲、ドラマ「夜行観覧車」(TBS系)の緊張感を音楽で盛り上げた「VOICE」、感動の温かい涙を誘う「ママへ」など、よく耳にしたヒット曲を網羅。当時、アルバムに未収で「Still... feat. AK-69」のカップリングでしか聴けなかった「Wavin' Flag -Coca-Cola(R) Celebration Mix-Version AI-」(アフリカ出身のラッパー、ケイナーンとのコラボ曲で、日本語で歌うAIのヴォーカルがメインになっているヴァージョン)が収録されたのもうれしい限りだ。
そもそもデビュー10周年のタイミングで制作された『THE LAST A.I.』は、AIが新たなフェーズに突入したことを示す作品だった。チャカ・カーン、スヌープ・ドッグ、ボーイズIIメン、ジュディス・ヒルといった海外の大物アーティストが参加したこのアルバムは、積年の夢であるグラミー賞獲得に向け、世界を視野に入れた音楽制作へと舵取りした一枚。次作『INDEPENDENT』は、東京とロサンゼルスとニューヨークを飛び回り、新進気鋭の海外クリエイターと制作。世界的ブームの兆しをみせていたEDMに目配せしながら、以降、本作収録の「INDEPENDENT WOMAN」や「sogood」「HANABI」といったエレクトリックビーツもレパートリーに採り入れ、新たなAI像を打ち出してきた。
本作はそうした最近の楽曲+AIクラシックの数々という構成。もはや国民的ナンバーと呼びたい代表曲「Story」はオリジナルヴァージョンに加え、映画「ベイマックス」の日本版エンドソングになっていた英語ヴァージョンも収録。他には、ライブでの合唱が定番になっている「My Friend」や、チャートで自身最高位の2位を獲得した「BELIEVE」、疾走感が抜群に気持ちいいダンスナンバー「YOU ARE MY STAR」など、どれもAIのキャリアを語る上で欠かせない曲ばかりだ。
本作を通じてこれまでのAIを振り返ってみると、彼女の曲には「愛」が通底していることを改めて感じる。その対象は異性、同性問わず。恋愛ばかりでなく、友人や家族、ファンに向けた愛もたくさん歌ってきた。とりわけAIが歌う“ラブソング”は、相手への励ましや思いやりにあふれているのが特徴。相手をリスペクトし、上から目線で意見を押しつけるのではなく、上目遣いで媚びを売るのでもなく、お互いに助け合って、支え合って、前を向いていこうと歌う曲が多い。しかも、歌詞はシンプルでわかりやすく、気取ったところがないから親近感も湧きやすい。特に女性ファンの中には、歌っているときの彼女を友達であるかのように思っている人も多いのではないか。それくらい身近に感じられる曲をつくり、歌えるのが、AIの大きな魅力だろう。