メジャーデビューシングル『太陽に笑え』リリースインタビュー

Anlyがルーツミュージックをポップに表現する理由「その時代に合った音で表現できたらいい」

Anly

 沖縄・伊江島出身の18歳のシンガーソングライター、Anly(アンリィ)がシングル『太陽に笑え』(表題曲はドラマ「サイレーン刑事×彼女×完全悪女」主題歌)でメジャーデビューを果たす。幼少の頃から父親の影響でブルース、オールドロックに親しみ、自然に音楽の世界に導かれた彼女。高校3年生の夏に作ったというロックチューン「太陽に笑え」にも、ルーツミュージックをポップに表現する彼女の天性のセンスが存分に発揮されている。もちろん、凛とした強さとソウルフルな大らかさを共存させたボーカルもきわめて魅力的だ。

 今回リアルサウンドでは、彼女に初インタビューを実施。「太陽に笑え」の制作をフックに、新しい刺激(東京での生活、初めての夏フェス、ロンドンのSSW“ガブリエル・アプリン”とのセッションなど)を受けながら進化を続ける現在の状況について聞いた。(森朋之)

「東京で曲を作ると、沖縄にいるときとは違う雰囲気になる」

――今年の春に高校を卒業し、8月にはインディーズ盤『Bye―Bye』をリリース。生活環境もかなり変わったんじゃないですか?

Anly:そうですね。(沖縄と東京を)行ったり来たりしてるんですけど、東京にいる時間が多くなって。東京で曲を作ると、沖縄にいるときとは違う雰囲気になるんですよ。テンポが速くなったり、鋭い感じになったり、メロディが奇想天外に動いたり。沖縄のときはもっとゆっくりした曲が多かったから、「影響を受けやすいんだな」って(笑)。おもしろいなって思いますね。

――デビューシングル『太陽に笑え』はどこで書いたんですか?

Anly:沖縄で書きました。曲が浮かんだのは高校3年生のときの夏なんです。ストリートライブをやっているときに、ちょうど目の前に太陽があって眩しい日があって、そのときに曲のイメージがフワッと浮かんで。去年の夏は「音楽の道に進むぞ」という気持ちが固まりつつあったので、自分の背中を押せるような曲を作りたかったんですよね。ライブをやっているうちにいろんな人から「良かったよ」とか「いい曲を作ってね」って声を掛けられるようになって、島に帰ると「がんばってね」と言ってもらえることが増えて。そうすると「もっと歌いたい」「(沖縄)県内外の人たちにも自分の歌を届けたい」という気持ちが大きくなってきたんです。気持ちが揺れてた時期もあったんですけど、そういうときも歌や友達が助けてくれて。次は自分がそういう存在になりたいと思ったんですよね。

――「太陽に笑え」のアレンジは、根岸孝旨さん。エッジの効いたロックサウンドに仕上がっていますね。

Anly:曲を作ったときから凛としたイメージがあったし、ギター1本でやっていたときから雰囲気は変わらないんですよね。ベーシックな部分は変わってないんだけど、根岸さんが感じたテンポ感、エレキギターのフレーズが入ったことでさらにカッコ良くなって。根岸さんには『Bye-Bye』に入っている「This Town」もアレンジしていただいたんですけど、自分がふだん聴いている音楽もリサーチしてくれて、イメージ以上の音を作ってくれるんです。「太陽に笑え」のレコーディングでも、「ちょっとやってみようか」ってバンドでセッションした時点で想像以上に良いものが出来ていて。「いきなりこんなにカッコ良くなるんだ?!」って思ったし、イメージと違っていても「こういうやり方もあるんだ。すごいな」というものばかりで。根岸さんのサウンドは、自分に合ってるなと思いますね。

――ボーカルのレコーディングに関しては?

Anly:歌は好きなように歌わせてもらってます(笑)。たとえば<歩け 歩け 負け続けても>のところは、本当にそういう気持ちになれるような力強さを出したいと思ったり。ライブでは数回歌っただけなんですが、そのときもこの曲のパワーをすごく感じていて。それをレコーディングできたらいいなと思って、一生懸命に歌いました。

――サウンドも歌詞の内容も、メジャーデビューのタイミングにピッタリですよね。

Anly:いつもで原点に戻れるような曲だなって思いますね。自分が歌を歌いたいと夢見たときの気持ちだったり、ストリートライブのときに暑いなかで聴いてくれた人たちに対する感謝だったり。それを忘れずに進み続けてほしいという自分への気持ちも込めてるんですよ。もちろん、それが聴いてくれる人に対するメッセージになってほしいと思うし、この曲がデビュー曲に選ばれてすごく嬉しいです。

――まさに<忘れないで この気持ちを/幼い夢を 見ていたいの>という歌詞もありますが、実際、幼少の頃から歌を歌いたいと思っていたんですよね?

Anly:そうですね。歌手になりたいと思い始めたのは“だんだん”という感じだったんですけど、小さいときから歌が大好きだったので。夕方になると父がギターを持って、夕飯ができるまで窓辺で歌っていたんです。私も一緒になって、意味もわからないのに英語をマネして歌って。そのときに歌っていたのがブルースだったり、エリック・クラプトンやCCRで、それが自分のルーツミュージックになってるんですよね。

――原曲よりも先にお父さんの歌を耳にしていたんですね。

Anly:そうですね。父親がたまに(沖縄)本島でCDを買ってきてくれたんですけど――伊江島にはCD屋さんがなかったから――そのときに「あ、この曲だ!」って(笑)。東京にいるときに久しぶりにクラプトンを聴いたりすると、やっぱり懐かしい気持ちになるんですよね。島のことや小さい頃のことを思い出して…。ビートルズの「ブラックバード」も歌ってたんですけど、ポール・マッカートニーのライブであの曲を聴いたときも泣きそうになりました。キレイな曲だなと思って、夜な夜な練習してたので。

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