ISHIYAがCRASSの映像コラージュ集を分析
CRASS映像コラージュ集が伝える、伝説のパンク・バンドからの生々しいメッセージ
また本作には、1983年に発売されたオリジナルのラストフルアルバムである『Yes Sir,I Will』のタイトル曲が、2009年にリマスターされた音源と共に2テイク収録されている。この楽曲の歌詞を理解し、映像を観ると、彼らが以前と変わらない姿勢を保ち続けていることを突きつけられて愕然とするだろう。約45分ほどある『Yes Sir,I Will』だが、アルバム発売当時もA〜B面合わせてひとつの曲のようになっていて、その曲の中での展開や、メッセージに合わせた映像は見応え充分だ。
日本語訳されたブックレットも素晴らしい。CRASSが伝えたかった「愛」のメッセージは、この日本語訳によって再び広まっていくだろう。彼らのメッセージは、何も難しく捉える必要は無い。歌詞でも言っているが、CRASSの曲はテレビドラマのテーマ曲や流行歌謡曲のようなものではない、真実のラブ・ソングだ。歌詞を理解して映像を観ることにより、CRASSというバンドが目指していたものが明確に伝わって来るだろう。また、CRASSの歌詞は、読み物としても優れており、現代の社会が直面している問題が、当時の社会でも全く同じように内包されていたことが如実に伝わってくる。
各曲の歌詞を読み、その曲ごとに映像と照らし合わせて行くことで、この映像作品集の奥深さと、CRASSの奥深さが観る者の脳裏に自然と刷り込まれて行く。惨劇が繰り返される映像では、恐怖が染み付くような感覚にさえ陥ってしまう。一種の洗脳に近い表現ではあるが、これこそがCRASSのアートワークの真骨頂だ。メディアによって民衆をコントロールする手法を、逆手に取った表現とも言えるだろう。いまのタイミングでこの作品が発売されたことさえ、CRASSというバンドにとって必然だったように思える。
「設定ではなく その生き方を変えろ」
「自分を支配できるのは自分だけ」
『CRASS:SEMI-DETACHED VIDEO COLLAGES 1978-84』は、混沌を極める現在の日本だからこそ、そのメッセージが響き、作品の重要性が再認識されるはずだ。
■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST
■リリース情報
『CRASS:SEMI-DETACHED VIDEO COLLEGES 1978-84』
発売:10月21日(水)
価格:4,000 円(本体)+税
封入特典:英語・日本語歌詞ブックレット
仕様:特製スリーブケース
<収録曲(全6曲)>
Reality Whitewash / Shaved Women / Mother Earth / Smother Love Bomb / Yes Sir, I WILL /Yes Sir, I WILL (2009 年リマスター版