ポルノグラフィティ、新作のチャートアクションに見る“清々しい大衆性”とは?

 「自分、シンガーでアーティストですから」という自意識が薄いのか、あるいはバラエティでうまく立ち回れそうな明るさと滑舌の良さが際立つからか。実際のトークはよく噛むらしいが、歌っている時の岡野は、イケメンキャラではないが非常に好感度の高いタレントに見えることがある。貶しているつもりはまったくないですよ。自分語りに忙しいSSWとか、深刻ぶって深淵な音楽に向かっていくロックバンドの自己愛に比べて、ポルノの放つ「大衆性」のなんと清々しいことか。あくまでマスに向けたバラエティを意識しつつ、ヘンに大御所ぶることなく、ウケりゃいいんだと開き直ることもなく、聴けば「あぁ、ポルノだ」とわかる曲ばかりを量産してきた彼ら。これは誰にでもできることではない。

 最新作も、まさしくバラエティに富みまくった内容。シングル曲の「Ohhh!!! HANABI」もよく聴けばソカっぽいリズムが入ってくるし、昔からお得意のラテン風、最新のEDMっぽい曲、ロックにカントリー、驚きのラップ調などなどお楽しみはたっぷり。しかし、あくまで「~調」であり「~っぽい」アプローチなのだ。マニアックぶらず、ツウぶったりもしない。いろんなフレーバーを手繰り寄せながら、結局ポルノグラフィティらしい曲、大衆性を備えた歌謡曲に落とし込んでいく彼らの手腕は、今の時代、とても貴重だという気がする。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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