嵐は「恋愛対象」を超えた存在に? 新しいウェディングソングが示すアイドルとしての現在地
嵐の47枚目のシングル『愛を叫べ』が、9月2日にリリースされる。表題曲は現在、リクルートゼクシィのCM曲としてオンエア中で、実際にプロポーズをするカップルたちのドキュメント映像をハッピーに彩る“ウェディングソング”だ。近作はエレクトロやテクノ寄りのクールなアレンジが多かった嵐だが、今作はアップテンポでハートウォーミングな作風で、アイドルポップスらしい仕上がり。キャッチーでポップなサビは耳馴染みが良く、すでに口ずさんでいるというファンも少なくないだろう。
これまで同CMでは、“祝福される側”である新郎新婦の心境を表したバラード調の楽曲が使用されてきたが、今回は“祝福する側”の心境を表しているのも印象的だ。CMを手掛けたクリエイティブディレクターの箭内道彦氏は今回、嵐を起用した理由について、「僕がイメージしたのは、新婦の友人たち、それが嵐の5人です。本当は、新婦のこと、ずっと好きだった、かもしれない。だから正直、ちょっぴり後悔や嫉妬もなくはない。でも今日、それが大きな祝福に変わる。そんな歌をと」と語っている。(参考:ゼクシィCMサイト)
嵐がこれまで発表してきたラブソングにも、結婚式で人気の楽曲はある。たとえば、2008年に発表された「One Love」はその代表格だろう。「百年先も愛を誓うよ 君は僕の全てさ」という歌詞は、新郎の心境を代弁するのにマッチしており、新婦としても嬉しいメッセージとなること受け合いだ。2007年「Love so sweet」や、2009年「明日の記憶」も、未来へと連なる“愛”を歌った楽曲で、やはり結婚式にぴったりといえる。しかし、これらの楽曲は男性から相手に対する思いを歌ったもので、「愛を叫べ」のように、異性の友達に向けて歌ったものではなかった。
ここに、いまの嵐がアイドルとしてどのようなポジションにいるのかが表れているようにも思える。嵐は現在、メンバー全員が30代となっており、単純に“仲の良さ”や“若々しい可愛らしさ”だけが求められている存在ではなくなってきている。7月31日に放送されたニュース番組『NEWS ZERO』のスピンオフ番組『櫻井翔×大野智×加藤シゲアキ アイドルの今、コレカラ』では、櫻井翔が現在の活動スタンスについて「いつか可愛くなくなっていく、人間だから。そうなった時の畑を今から耕しとかなければならないってずっと思ってた。人気じゃなくて実力を付けるということ」と語っている。(参考:櫻井翔×大野智×加藤シゲアキ、“アイドルの今”を語る 櫻井「いつか可愛くなくなる、人間だから」)
これは、タレントとして世の中に通用する“一芸”を身につけようという決意であると同時に、ファンとの関係をより多様なものにしたい、という意志でもあるのではないか。かつて嵐に恋心にも似た好意を抱いていた同世代の女性ファンの多くも、年齢や経験を重ね、これまでとは違う形でメンバーを応援したいという気持ちを抱いていても不思議ではない。