成馬零一「テレビドラマが奏でる音楽」第7回
氣志團とドラマ『LOVE理論』の共通性とは? 「感じるな、考えろ!!」という批評的メッセージを読む
春クールのドラマが次々と最終回を迎えているが、ずっと気になっていたのが、テレビ東京系で月曜の深夜に放送されていた『LOVE理論』だ。
笑える自己啓発本としてヒットした『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)などの著作で知られる、水野敬也の恋愛指南書『新装版LOVE理論』(文響社)を原作にドラマ化された本作は、田舎から上京してきた20歳の童貞大学生・今田聡(大野拓朗)が、意中の女子大生・桐谷怜子(清野菜名)を恋人にするために、キャバクラ『ピカレスク』の店長・水野愛也(片岡愛之助)から恋愛テクニック・LOVE理論を伝授され、一人前の男へと成長していく物語だ。
形式は、『モテキ』(テレビ東京系)以降の“自意識過剰な童貞青年の成長ドラマ”なのだが、作りは情報バラエティに近く、先に自分の恥ずかしい話をすることで相手の恥ずかしい話を聞きだし新密度を高める「暴露返し理論」や、自分の服を女の子に選んでもらうことを口実にデートに誘う「ファッションマグロ理論」など、恋愛マニュアルとしても妙に説得力があるように見えるのが面白いところである。
ただ、この種のドラマは個人的には苦手で、見る前は少し抵抗があった。それは自意識過剰な青年が、狼狽して恥をかく姿を突き放した目線で見せることで、見世物のように扱う傾向があるからだ。
だから、劇中に主人公を導く師匠的存在が登場しても、最初は何も言わずに主人公が大失敗してから、説教するというパターンがほとんどで、その見せ方自体が、ダメなアルバイトの新人研修のようで、「失敗するってわかってるなら、最初にちゃんと説明しろよ!」と、ついつい思ってしまう。
そういった後出しジャンケン的な説教自体、逃げ道を奪い、自分の教えを盲目的に信じるように仕向ける自己啓発セミナーのメソッドなのだが、『LOVE理論』が素晴らしいのは、主人公が失敗する前に、LOVE理論マスターの店長が先回りして、具体的なアドバイスをしてくれることだ。
だから、LOVE理論そのもの以上に、自信のない若者に対して大人がどのようにアドバイスを送るのか。という見せ方の部分で感心することが多く、お色気要素満載のバラエティ風深夜ドラマなのに、「何でこんなに教育的なんだろう?」と、驚かされた。
失敗する前に、ちゃんとアドバイスしてくれるドラマは本当に少ないのだ。