ワンオクやマンウィズ海外人気の理由のひとつ? 日本語詞と英語詞をうまくミックスさせる方法

「英語のリズム感で作られてる楽曲だと、日本語を使いづらい」

――近年のJ-POP楽曲において、日本語詞と英語詞のバランスで一番多いパターンは?

zopp:サビは英語で、平歌が日本語という楽曲が多くなった印象です。たとえば三代目 J Soul BrothersやE-girlsもそうですね。シングルの表題曲でMVを作るようなものは、サビで全員が踊れるように英語詞で同じフレーズを繰り返しながら引きの画で撮りますし、平歌では個々にスポットが当たったりしながら、さらっと流れていく。

――同じJ-POPでも、アイドルなどの楽曲はどう違いますか。

zopp:逆に面白いなと思っているのが、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅ、BABYMETALのように、女性アーティストの場合は、日本語でそのまま勝負しているものが多いということです。それは海外にいる一部の方が、日本のアニメを見るようになったことがきっかけなのかもしれません。アニメは日本語の音声に現地の字幕が付いている場合が多く、そのパターンだと主題歌はそのまま日本語詞の場合があります。リスナーは日本語バージョンの歌を聴き慣れているので、「アニメと同じものが聴きたかったのに、なんで勝手に英訳しているの?」という風に思うのでしょう。先に挙げたバンドの例と比べて、日本語を活かした勢力もある、という状況は見ていてワクワクしますね。

――日本のアーティストも、最終的には日本語詞にするけど、仮歌は英語詞で作る人も少なくないですよね。

zopp:海外の方からの楽曲提供が多くなった近年は、デモ音源に英語詞の仮歌が入っていることも多いです。英語のリズム感で作られてる楽曲だと、日本語を使いづらいので、必然と英語詞が増えますし、クライアントからの要望も英語詞になることが少なくありません。僕は海外に住んでいた期間があるため、英語詞の依頼をいただくことが多々あります。そして、その依頼に対して、音を正確に聴きとれて、上手く歌詞を乗っけられるというのが、僕の特技でもあるんですよね。もちろん、日本語の言葉を乗せるときも、英語の発音を活かして日本語も乗っけられますし。

――zoppさんが英語詞を書く際に使うテクニックとは?

zopp:僕が使う手法で、日本語詞にも共通するのは「7割表現」ですね。多くを語らずに、相手に含みを持たせて、想像や妄想、実体験と繋ぎ合わせやすいような作品作りをする、というのが僕の思っている「7割表現」です。実際、日本のリスナーに対して英語を使うと、日本語をそのまま使うより、表現としては伝わりにくくなることが多いので、英語詞を書くということも「7割表現」に近いのかなと。

――歌詞の本質を婉曲的に表現するという意味合いでも英語を使うこともできるわけですね。

zopp:そうですね。僕らは聴き手側に対して、そういう表現も出来ますし、英語のほうが少ない量で多くを語れますからね。たとえば「I Love You」というフレーズは、世界で最も使われている愛情表現のワードだと思いますが、これは「アイ・ラー・ビュー」の3つの音です。ここに同じ意味の日本語を乗せようと思うと、直訳では「私はあなたのことが好きです」と15文字が必要になります。それを英語だとたった3つに圧縮してくれて、伝えたいと思う内容をストレートにしてくれる。日本語で頑張って3つにするなら、「好きだ」になりますね。尾崎豊の『I Love You』だと、サビの<I Love You>という歌詞を「好きだ」っていうしかないんです。ただそうすると、「私は、あなたのことが」という部分が無くなって、意味も伝わりづらい。

――作家陣の話だと、安室奈美恵は新作『_genic』で気鋭の海外クリエイターを起用したり、先述のSEKAI NO OWARIもそうですよね。

zopp:有名な音楽プロデューサーの方を起用していますね。MAN WITH A MISSIONもZebraheadとのコラボでスプリットシングルをリリースしたりと、垣根がなくなってきたといってもいいでしょう。一昔前は海外の作曲家やエンジニアが参加したら「おぉ、すごい」という時代でしたけど、いまは「それがどうしたの?」くらいの感覚になっているような気がします(笑)。

――海外クリエイターを「フックアップした」といえるものもありますしね。

zopp:向こうの人も「やったー! 日本のマーケットに入れた!」といえるものはきっとあると思うんですよね。それは他のカテゴリも同じで。映画も日本は大事なマーケットで、先日もジョージ・クルーニーが『トゥモローランド』で来日しましたし、ジョニー・デップも来ましたよね。映画が封切りされたときに、来日する俳優や監督が多くなったというのは、日本のマーケットが重要視されている証拠だと思います。あと、日本人はエンタメにお金を使うことが好きなのか、「タダより高いものはない」という格言があるからなのか、あまり無料のものを好んで使ったりはしないですよね。近年はそうでもなくなってきているかもしれませんが。

(後編NEWSの新曲にも使われた英語詞テクニックとは? 作詞家・zoppが国内外のヒット曲を分析へ続く)

(取材・文=中村拓海)

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zopp『1+1=Namida』(マガジンハウス)

■リリース情報
zoppによる初の書き下ろし小説『1+1=Namida』
出版社: マガジンハウス
296P/価格:1365円

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