NEWSの新曲にも使われた英語詞テクニックとは? 作詞家・zoppが国内外のヒット曲を分析

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 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家やコトバライター、小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。連載第1回では、中田ヤスタカと秋元康という2人のプロデューサーが紡ぐ歌詞に、第2回では“比喩表現”に着目してもらった。第3回となる今回は、前編でロックバンドとアイドルにおける、日本語詞と英語詞の使い分けを分析(マンウィズやワンオクが海外で受け入れられる要因のひとつ? 日本語詞と英語詞の使い分けを分析)。後編では、ジャニーズや海外アーティストの例も挙げつつ、近年の海外クリエイターとの仕事事情などを明かしてもらった。

第1回(きゃりーぱみゅぱみゅと小泉今日子の歌詞の共通点とは? 作詞家・zoppがヒット曲を読み解く
第2回(SMAP、NEWS、Sexy Zoneの歌詞に隠れる“引喩”とは? 表現を豊かにするテクニック

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「バラードはメロディの数が少なくて、日本語にすると多くを語れない」

――前編でクライアントの要望で英語詞を多めに入れることがあると話していましたが、それはどのような形に落としどころを見つけるのでしょうか。

zopp:要望以前に、音源デモ段階で仮歌が英語詞の場合、日本語を乗っけるとクライアントが「デモの時はあんなにカッコ良かったのに、日本語だとこんな感じなんだ?」と違和感を覚えて、印象が悪くなってしまうことがあるんです。プロとして、ビジネスという土壌に乗っかるためには、ニーズに答えつつ、マーケットを魅了するような作品を作らないといけないので、まずはクライアントの耳と目をクリアするために、英語で音源デモが届いたら、英語を多めに使ったり、元のメロディを活かすような擬音語や擬態語を使って、ポップに仕上げます。

――なるべくデモの雰囲気を残すというか。

zopp:そうですね。歌っているリズムを残すのは大事だと思います。僕の直近のクレジットを見ると、海外作家の曲が多いんです。とくにジャニーズ系を見ると、ダンサブルな楽曲やアップテンポなもので海外の方を起用することが多いので、僕がそういう歌詞をちゃんと書けるということを理解して、任せていただいているのだと思います。

――他方で、zoppさんは日本語詞に重きをおいているので、そちらの依頼も多いですよね?

zopp:そうですね。英詞でも、僕が書いているものは、日本語ライクに寄せているものが多いので。自分の周りの人間には「英語は得意だけど、あえて日本語を大事にしている作家なんです」と言っていただいているので、そこは補えているのかなと思います。

――ちなみに、zoppさんが手掛けた直近の歌詞だと、NEWSの「Sweet Martini」(6月24日リリース『チュムチュム』収録)がありますが、この曲にはどのような手法を使いましたか?

zopp:「Sweet Martini」は、大人のセクシーさを演出するために英語を多く使いました。およそ8割が英詞です。7割表現というのは「多くを語らない」という意味でもあります。大人のセクシーさといえば「多くを語らない」って感じがしませんか? そういう意味で、英語を使って多少ぼやかしてみました。ある程度は日本語があるので、内容は理解できると思います。かなりマニアックな英語も使っているので、一聴しても理解できないでしょう。でも、それが含みを持っていて、聴き手の想像力を掻き立ててくれるでしょう。訳してみたら、より深みのある内容なので、何度か聴いたあと、英和辞書を片手に聴いてみて欲しいです。

――その手法を使いやすいジャンルなどはあるのでしょうか。

zopp:とくにバラードはメロディの数が少なくて、日本語にすると多くを語れないため、英語を使うことでより深く、意味のある歌詞に変えることもあります。英語はそういう意味でも便利なツールに成り得ます。耳障りも良く、意味も沢山含んだ言葉になってくれるので。英語の苦手な日本人にとっては間接的な表現にもなりますけど、意味合い的には多くを語ってくれている場合もありますね。別の例だとMISIAの「Everything」のサビの「You`re everything」という箇所は、しっかり英語発音を使って4つの音で歌っています。これを直訳すると「あなたは私の全てです」なので、到底4つの音では足りない。そのため言葉を圧縮しつつ、中身のあるものにするのが英語なんです。ただ、短い単語に意味が詰まり過ぎているため、全部英語詞で書いてくれと言われると、すごく情報量の多いものになるので悩みます。

――海外の曲に同じフレーズの繰り返しが多いのもそういう理由ですか?

zopp:そうですね。海外ではサビのことをコーラスというのですが、日本だとサビは2パターン用意することがあっても、海外では同じフレーズを繰り返す場合が多いです。これは耳に残りやすくてキャッチーなものになるというのも理由ですが、情報量を抑える、つまり「そんなに言うことが無い」んです。1番があれば、そこで言いたいことを言い切れてしまう。日本語の場合は、言い切れない場合もあるので、1番と2番で歌詞を変えたりしていますね。

――海外作家とのコライトが増えたのはどのタイミングから?

zopp:2003年にリリースされたKinKi Kidsの『薄荷キャンディー』は、曲をスウェーデンの作家陣が書いて、歌詞は松本隆さんが手がけました。恐らくこのあたりが海外作家とのコライトやプロデュースの先駆けで、日本の音楽のビジネスに海外の方が参戦してきたのを目の当たりにした瞬間ですね。僕はこのぐらいの時代から海外作家が書いている曲を知っているので、彼らの成長が分かるんです。向こうでは、Aメロ、Aメロ、サビという楽曲構成が多かったんですけど、海外の曲はAメロが平坦なので、日本の作家陣が介入して、「それだったらお経みたいになっちゃうから……」と、Bメロという概念を後から日本向けに入れるようになりました。

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