チャットモンチーからShiggy Jr.に受け継がれたものとは? ガールズロックの系譜をたどる

統一王者候補としてのShiggy Jr.

「高3の途中まで音大受験用の対策をしっかりやってたんですけど、そこから進路を変えたきっかけがチャットモンチーなんです。チャットモンチーをテレビで見て、全てを捨ててバンドをやろうと思った」(レジーのブログ 2014/2/1 Shiggy Jr. インタビュー(前編) 2014ブレイク候補のルーツを紐解く 池田智子の発言を一部要約)http://blog.livedoor.jp/regista13/archives/1025117462.html

 6月24日に「サマータイムラブ」でメジャーデビューするShiggy Jr.。チャットモンチーが人生を変えた、いわば「チャットモンチーチルドレン」のひとりでもある池田智子をフロントに擁するこのバンドは、「ガールズロック」を巡るJ-POPのストーリーに新たなに名を刻む存在になるかもしれない。

 2013年末に「Saturday night to Sunday morning」でネット上の音楽好きコミュニティを席巻したこのバンドは、2014年リリースのアルバム『LISTEN TO THE MUSIC』で着実に支持基盤を広げ、今年満を持してのメジャーデビューとなる。メジャー初作品となる「サマータイムラブ」は、腰にくるビートを備えたバンドサウンドと華やかなストリングスやホーンが絡んだポップチューン。ブラックミュージックのようでもありアイドルポップスのようでもあるハイブリットな感触は2015年の空気を的確に切り取っているとともに、濃い音楽ファンからお茶の間のJ-POPリスナーまでを等しく満足させる可能性を秘めている。

 全ての作詞作曲を手掛けるギターの原田茂幸、ボトムを支えるベースの森夏彦とドラムの諸石和馬と同様に、ボーカルの池田智子が果たす役割も非常に大きい。すでに「オールナイトニッポン」でパーソナリティーを務めるなど、ライブのMCからSNS上のやり取りまであらゆる場面でバンドのスポークスマンとなっている。このバンドが掲げる「グラミー賞」という途方もなく大きい目標に向けて、Shiggy Jr.の存在を伝えるために何でもやるという徹底した姿勢。自由で破天荒な感じが魅力になっていたYUKIとは全く異なるが、「ゴールを定めて、やるべきことをブレイクダウンし、愚直に遂行する」という池田のスタンスこそ、今の時代の生き方として「憧れ・ロールモデル」になり得るものではないだろうか。

 「本格的なのに難解ではないバンドサウンド」「覚えやすい=歌いやすいキャッチーなメロディ」「フロントマンの稀有なキャラクター」。この3つを兼ね備えたShiggy Jr.がメジャーデビューする2015年は、このバンドの結成に大きな影響を及ぼしているチャットモンチーが活動の転換点となるであろう作品をリリースした年となった。もちろんそこには何の因果関係もないが、こういう偶然の積み重ねで時代は動いていく。ロックバンドの枠を越えていくチャットモンチーと、「ガールズロック」の系譜を新たに紡いでいくShiggy Jr.。異なるフィールドでのこれからの活躍と、いつか起こり得るだろうこの2つのバンドの邂逅を楽しみに待ちたい。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。

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