チャットモンチーが語る“音楽と寄り添う人生”「その時の自分の状態によって、音楽は変わっていく」

「徳島に帰ると、かなりフラットに戻れる」(福岡)

――なるほど。作品のお話に戻りますが、5曲目の「毒の花」は晃子さんが作詞の新しいタイプの曲。前作の『ときめき/隣の女』に引き続き、静かな鋭さがある曲ですね。

福岡:この曲は徳島で書いたんですけど、故郷にいると、東京にいる自分を客観的に見れるというか。徳島に帰ると、かなりフラットに戻れるんですよ。普段こんな感じだなって。例えば、自分自身が毒というものだとしたらどうだろうと考えると、すごく孤立しているものに思えますよね。でも、自分より強力な毒に会うと抑制される…人ってそういうものかなって、自分のことを考えたときにそう思ったんです。

――より大きな毒の前だと飲み込まれてしまうというのは、人間の一種の悲哀みたいなものでもありますよね。

福岡:でも、滅多に毒同士で会うことってないし、自分も他人を刺してしまうこともあったりする。(毒とは)滅多に交われないけど、制されるときがあるというか。とはいえ、人として生きるみんなのことを「花」って例えている曲でもあるんですよね。そういう感じで、なんかうまく言えんから歌詞にしてます(笑)。

――そうしたユーモラスな毒っ気のようなものは、チャットモンチーのこれまでの曲にも見え隠れしていましたが、今度のアルバムではかなり全編に散りばめられている印象でした。

橋本:毒っ気があるからこうやって曲にもなるし、「これ私のこと!」って言ってる人も多いんですね。みんなが思っていることなんだな、みんな毒を持っているんだなっていうことも、今回感じました。

――みんなが思ってるけど、普段は言わないことを歌う。

福岡:そういうのを歌ってる人が少なすぎるだけかも。私にとってはけっこう普通のことだと思うから、言っちゃえと思って書いてるんですけど、「毒がありますよね」「グロテスクですよね」ってすっごい言われて、「そんなにか」と思って、けっこう反省したり(笑)。本当に普通に恋愛や家族の曲を書くように出てきただけなので、取り立ててそれにメッセージを込めたってことじゃないんですよ。

――先ほど自分を客観視するという話が出ましたが、6曲目の「私が証」にも自分自身と向き合うような印象がありました。

橋本:「私が証」の歌詞は2年くらい前の歌詞で、いろいろ考える期間もあった時期のものだから、“今までとこれから”みたいな感じがありますよね。チャットモンチーとしてやっていく上での気持ちというか。

――音楽を作り続けることに重圧を感じることもありますか?

福岡:音楽を作るということは苦ではないんですけど、作る期間は、やっぱり定時で仕事する人たちがその時に見聞きするものを全部インプットするような気持ちでいます。全部見て、それを何かに変えてやろうと思うから、そういう意味でちょっと疲れることはありますね。あと、自分が傷つかずに歌詞を書くのは難しいなと、今回すごく思いました。毒というか、自分が周りにどういう人って思われてもいいというか、作品が良ければそれでいいと思えるようにはなりました。

――普段言わないことも、創作の種となるというか。

福岡:そうですね。もういいかなと思って(笑)。チャットモンチーはあまり自分たちとかけ離れたことは歌わないバンドなので、フィクション、ノンフィクションでいくと、ノンフィクションのことが多いんです。いま現在の自分がそういう人間なんだと認識されてもいいから、そのときしか書けないことを書いたほうがミュージシャン的には嬉しいというか。そのまま出せるのは自分とバンドの状態がいいということですからね。

――今回、西 加奈子さんが歌詞を書かれた曲(9曲目の「例えば、」)もあって、ある意味では異なる血が入っていますよね。でも、すごくチャットモンチーらしい曲でした。

橋本:ちゃんとチャットモンチーの曲になりました。もともとすごく好きな作家さんだから、交わらないはずはないとは思います。もちろん、「大好きな西さんの歌詞や! わぁっ」て思ったけど、好きやからこうなるよねって。

――交わる部分というのは、どういうところで感じましたか?

橋本:サビの<僕らにまつわるすべてのことは ひとつも欠けてはいけなかった>という部分は、10周年のチャットにすごく交わるなと思いました。

福岡:私も歌詞を見たときに“自分たちのことかな”って思いましたね。あと、作家さんというのがすごくいいハードルになったというか。西さんの本が好きな人も、チャットの音楽を好きな人もいいと思えるものを作りたいとすごく思ったんです。「やって良かった」と思えるものになるには、その歌詞にそって、ふたりで演奏するのがいいかなと思いました。

――だからこそ、この曲はチャットモンチーのふたりで作ったと。おふたりの考える西さんの言葉や作品の魅力とは?

橋本:歌詞と作品とではまた違うんですけど、文字を読んでいて想像が広がるし、「こういうことを文章にしてくれたんだ!」という感覚があります。きっと、チャットの歌詞の「毒」もそうやって思ってくれている人が多いと思うんです。「こういう気持ち、こうやって書くんや」「でも、難しくなく書いてるから、思いつかなかった」っていうことが多々起こって、西さんの本は特にそれのくり返しというか。「わっ」って驚くことばっかりだから、そういうのが好きなんでしょうね。

――さて、対バンツアーが発表になりましたが、これもかなり自由ですよね。たとえば、広島公演で共演する柳沢慎吾さんが何をするんだろうとか。

福岡:柳沢慎吾さんは何をしてくれるのかまだわかんないです。ダメもとでお願いしたらOKを頂けました。とにかく人を引きつける魅力が百人力くらいある人なので、そういう意味ではめちゃくちゃ強力、バンド並みに音圧がすごいと思うんですよ。このツアーは基本的に、チャットが好きなバンドをお客さんに好きになってもらったり、個々で見たことがあっても、一緒にいるのは見たことがないとか、組み合わせ的に面白いものを見てもらったり、というポイントをすごく大事にしています。イベントを組むのも、出るのもアマチュアのときから多くて、一日6組くらいのイベントに出る世代だったので、どうしてもイベントをやりたがるところがあって(笑)。あの感じって絶対に楽しかったし、ワンマンで見るのももちろんいいけれど、そこでしか出会えないこともすごく大事やでって思いますね。

――チャットモンチーの編成としてはどうなるんですか?

福岡:男陣、乙女団、チャットの6人のミックスですね。とにかく聴いても見ても楽しめるライブにしたいと思っているので、絶対に一回はライブに来てほしいです。

橋本:うん。フェスにミックスで出るのも初めてなので、楽しみたいです。

(取材=神谷弘一/構成=橋川良寛)

■リリース情報
『共鳴』
発売:2015年5月13日
<CD>
01. きみがその気なら
02. こころとあたま
03. ぜんぶカン
04. 隣の女
05. 毒の花
06. 私が証
07. 楽園天国
08. 最後の果実
09. 例えば、
10. いたちごっこ
11. ときめき
12. ドライブ

<DVD> ※初回生産限定盤のみ
「共鳴なう」
Music Video
01.こころとあたま
02.いたちごっこ
03.ときめき
04.隣の女

特典映像
05.「男女六人ないものねだり~『共鳴』完成パーティー~ 」

初回生産限定盤(CD+DVD / 2枚組)
KSCL-2610~2611
¥3,400(税抜)
①DVD付2枚組
②デジパック仕様
③シングル (『ときめき / 隣の女』) とのW購入者特典抽選応募券封入

初回仕様限定盤 (CD / 1枚組)
KSCL-2612
¥2,900(税抜)
シングル (『ときめき / 隣の女』) とのW購入者特典抽選応募券封入

■ライブ情報
全国対バンツアー「チャットモンチーの求愛 ツアー♡2015」
2015年
6月04日(木) 広島CLUB QUATTRO
<出演者>
チャットモンチー、柳沢慎吾

6月05日(金) Zepp Fukuoka
<出演者>
チャットモンチー、ハナレグミ

6月10日(水) Zepp Namba (OSAKA)
<出演者>
チャットモンチー、Ken Yokoyama

6月11日(木) Zepp Nagoya
<出演者>
チャットモンチー、GRAPEVINE

6月20日(土) 仙台Rensa
<出演者>
チャットモンチー、YOUR SONG IS GOOD

6月26日(金) Zepp Sapporo
<出演者>
チャットモンチー、スチャダラパー

7月01日(水) Zepp Tokyo
<出演者>
チャットモンチー、ほか(※後日発表)

開場:18:00 / 開演:19:00 (※仙台公演のみ 開場17:00 / 開演18:00)
一般チケット:¥4,860 (税込)
チケット一般発売:4月25日(土)
*東京公演のみ6月20日(土)一般発売

ワンマンライブ「チャットモンチーのすごい10周年 in 日本武道館!!!!」
11月11日 (水) 日本武道館
開場:17:30 / 開演:18:30
一般チケット:¥6,700(税込)
ワンダフルチケット~お土産付き~:¥11,111(税込)

http://www.chatmonchy.com/

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