くるり・岸田繁とOKAMOTO’Sが語る、ビートルズとポール・マッカートニーが次世代に残したもの
岸田繁、ビートルズのゆかりの地を訪ねる
――くるりは作品毎に様々な挑戦があって、それこそいろんな楽器を使ってもいますが、やはりビートルズは大きな存在ですか。
岸田:月並みですけど、ダントツで影響を受けてるバンドなので。ポールって優等生的な、楽器がうまいロックンロールをやる人ってイメージもあるけど。一般的にポップじゃない音楽がポップに聴こえるようなことをやっていた時期がすごく好きで。「マーサ・マイ・ディア」とか。ビートルズって、なにを聴いたらこんなのできるんやろうっていう曲があって、とくにジョン・レノンの曲とかそうやけど。でもポールのそれがとんでもない破壊力がある。自分が音楽を作るときのカタルシス、これはびっくりするやろうな、みたいなのにちょっと近い感じがする。でもバンドのなかに、すごいソングライターがふたり……ジョージもそうやけど、天才的ぶっ飛び野郎がふたりいて、ようバンド続いたなと思うけどね。
ショウ:最初のほうのシングルは、A面、B面ふたりで争ってますしね。
岸田:争ってるよね。両方よくて、でもクレジットはレノン=マッカートニー。泣けるよねえ。ちょっと余談やけど、俺、昔リバプールに1回行ったんよ。ウェールズ人のミュージシャンの友達がいて、リバプールに引っ越したから遊びにおいでよっていうので。普段、観光はしないほうやねんけど、ビートルズのゆかりの地を訪ねるバスツアーがあって。ふたりで行ってみようかってことになったんですね。古いバスで、カセットテープの音が割れてて、「マジカル・ミステリー・ツアー」の♪パーン、パパッていうのが、♪シャーン、シャシャーンっていってるその感じもよくて。ガイドがかなりのリバプール訛りで喋るわけよ、「次はジョージの生家に行きます」とか「ここがジョンとポールが出会った教会です」とかね。それでゆかりの曲もかかるわけ。で、段々気分も上がってきて。「ペニー・レーン」がかかって。すごい好きな曲やから、ああ「ペニー・レーン」やって思ったら、ペニー・レーンって通りに入るわけよ。坂になってて、歌詞に出てくる床屋の前を通りすぎるのよ。もうヤバい俺、涙腺崩壊って感じになって。「ペニー・レーン」はサビになって転調するやん。あのいい感じのところで、ちょうど丘の上にさしかかって。サビで、リバプールの街が目の前にパーっと広がって――ポール、こんないい曲をほんまありがとう! って、涙腺大崩壊して(笑)。今度は「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」が流れ出して、もうヤバい、あの孤児院に行くのかと思って。実際は、ストロベリー・フィールドっていうんですけどね。
ショウ:そうなんですね。
岸田:もう、頬に跡がつくくらい泣いてて。《Let me take you down~》って言ったら、看板が見えてきて。恥ずかしさも忘れてデジカメ持って、思わず表札を撮ったよ(笑)。
新しい音楽を作る第2のポールは現れるか
――OKAMOTO’Sとしてはビートルズやポールに音楽的にインスパイアされていることはありますか。
ショウ:刺激を受けてないミュージシャンはいないだろうなって思うんですよね。コウキなんてね?
コウキ:最初に買ったCDがポール・マッカートニーでしたね。2002年の『バック・イン・ザUS』。そこからビートルズで。今、ビートルズのレコードのオリジナル盤を人から借りていて、全部聴き直しているんです。それまでは雲の上の存在すぎて、実際にいる人だなんて思わなかったんですけど、レコードを聴くと結構、リハーサルテープを聴いている感じがするというか。演奏してる感じが伝わってきて。こんなすごい演奏していたんだなとグっときましたね。
ショウ:ビートルズってどんな音楽好きでも好きな曲がありますよね。俺、最初は「アイ・アム・ザ・ウォルラス」しか聴きたくないみたい変にこだわっている部分があったけど。そういうのでも入れちゃう。
岸田:入口が多いよね。「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」も、ポールがレゲエを聴いて作ったらしいね。
ショウ:レゲエだったんですね。
岸田:たぶんうわーって思ったインスピレーションだけで作った感じやろうけど、いいよね。あの名店で食べた味を家で作ってみようみたいなんで、結構うまかったっていうね。
――今も、この音どうやって生むんだろう? って試行錯誤するのは、レコーディングであることですよね。
岸田:みんなそうやってやってるんじゃなかな。OKAMOTO’Sはみんな腕の立つプレイヤーたちやから、僕今回一緒にやって2回目ですけど、全然違うバンドになってる。バンドって化学反応が見えるからそれが面白いですね、見ていると。ビートルズとは違うけど、ビートルズみたいな人たちっていう。
ショウ:すごく嬉しいです。
ハマ:でもくるりの新しいアルバム『THE PIER』は聴いたときにビートルズみたいだなと思いました。
レイジ:それこそ「日本海」なんて何を聴いたらこんなサウンドになるんだろうって(笑)。ちょうどそのときにレコーディングしていたスタジオの隣がくるりで。岸田さんが、新しいのできたから聴いてやっていうので、みんなで行って聴いたらハンパない楽曲が流れてきて。
ショウ:変な曲をいっぱい作るようになったのはあれがきっかけかも。
岸田:はははは、ごめんな。
ハマ:いい意味でヤル気が一回削げたよね。頑張らないとなと思った。
岸田:いろんな知識がついてきたり、いろんな情報があったりするとどうしても守りに入りやすいから、新しいことってやりにくいけど。でも例えばやけど、この先ポールとかがいなくなったり、誰も聴いたことないものばかり作っていた世代が一旦いなくなったときに、絶対次にそういうのがまた出てくるんじゃないかなと思うんですけどね。クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」を聴いたときもびっくりしたし。そういう感覚ってたまにしかないから。期待してるよ、OKAMOTO’Sに。
ハマ:え? そんな締めですか(笑)。
(取材・文=吉羽さおり)
■リリース情報
『ぴあSpecial Issue ポール・マッカートニー来日記念号2015』
発売:2015年4月2日
価格:1,200円
・岸田繁(くるり)
『岸田 繁のまほろ劇伴音楽全集』
発売:2015年4月15日
価格:2,376円(税込)
・OKAMOTO’S
両A面シングル『Dance With Me / Dance With You』
発売:6月17日
価格:初回盤(DVD付、7インチジャケット仕様) ¥1,389+税
通常盤 ¥1,111+税
<収録内容>
・CD
1. Dance With Me
2. Dance With you
3. ZEROMAN(Single ver.)