乃木坂46、シリアスな新シングルが50万枚突破の背景は? ポスト「卒業ソング」の文脈で読む

 楽曲の内容に関しては、メッセージ性の強い曲だというので、やはり歌詞に注目するのが筋でありましょう。中身としては「何のために生きるのか」というものでありまして、やはり若者らしい存在の理由に向き合うものになっております。人生の意味を問うているから哲学的なのかと言ったら別にそんなことはないわけですが、若者がしかつめらしく膝を抱えて考えるのにはちょうどいいテーマなわけです。しかし今どきこういうことを言っているとすぐメンヘラとか言われてしまいがちなわけですが、書かれているのが普遍的な内容であることは間違いないでしょう。

 まあ結局は「生きる意味とかウダウダ考えるないで現実を生きろ」的な、よくある箴言に落とし込んでいくわけですが、普遍的な若者の悩みとしてサクッと終わらせるからこそ、それ以上のややこしい結論は必要ないわけです。どうせ歳を取ると、わりと人はなぜ生きるかということはどうでもよくなっていったりするわけで、このくらいでちょうどいいのです。むしろ今日日、こんなにも素朴なテーマと結論をセットにして打ち出し、きちんと50万枚とか売ってしまうのは素敵なことではないでしょうか。もちろん、こればっかりだとしんどいわけですが、こういうものがない時にこれを出すのは、少なくともありがちな内向的なロックバンドのシリアスさよりは、なかなか反抗的なことだなと思う次第です。

■さやわか
ライター、物語評論家。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『朝日新聞』『ゲームラボ』などで連載中。単著に『僕たちのゲーム史』『AKB商法とは何だったのか』がある。Twitter

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