“崖っぷちSSW”が迎えたいくつかの転機……沢井美空が新作で見せた成長の証とは?

 そしてもう1つの転機は、昨年1月から期間限定で日本テレビ系『ウーマン・オン・ザ・プラネット』でオンエアされた、ニューヨークでの滞在記だ。番組内で「崖っぷちシンガーソングライター」として紹介された彼女は単身で海外移住し、英語を勉強しながら1人の女性として成長していく姿を見せた。渡米タイミング的には『ごめんね、いいコじゃいられない。』で少しずつ注目を集め始めた頃で、実際このシングルから続く6thシングル『こんな世界、知りたくなかった。』までのリリース間隔は実に9カ月も空くことになる。渡米などさまざまな要因があったとはいえ、この1年近い期間にライブや制作を重ねることで、人としてだけでなくアーティストとしても一皮も二皮も剥けたのではないかと想像している。

 さて、その2ndアルバム『憂鬱日和。』はバラエティ豊かな楽曲がズラリと並び、実に聴きごたえのある作品集に仕上がっている。1stアルバムまでの作風の延長線上にあるポップチューンやピアノバラードは、楽曲としての仕上がりがより高品質。それだけではなく、チップチューン風サウンドと優雅なストリングスが混在するキラーチューン「カラフル。」、80年代の歌謡曲的メロディを持つ「ごめんね、いいコじゃいられない。」、どことなくソウルフルな節回しが耳に残る「I Know」、攻撃的なロックナンバー「Lost Generation」など新たな要素が貪欲に取り入れられている。そして2ndシングル表題曲「なきむし。」がアコースティックバージョンとして再録音されているのも注目ポイントだろう。シングルバージョンとの歌唱力、表現力の違いが色濃く表れた新バージョンを聴けば、彼女がこの数年でどれだけ成長したかがはっきりわかるはずだ。

 最新シングル『カラフル。』のリリースにあわせて印象的なロングヘアをバッサリ切った沢井美空。このイメージチェンジしたビジュアルも、なにげに2ndアルバム『憂鬱日和。』にピッタリ合っているように思えてくる……ある意味、このイメチェンこそ“3つめの転機”と呼べるかもしれない……そんな軽やかなイメージを放つ彼女の新作が新たに獲得したアニメファン層だけでなく、ごく一般的なJ-POPリスナーにどのように受け入れられるのか、非常に気になるところだ。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

20150309-sawai3.jpg
沢井美空『憂鬱日和。』

■リリース情報
『憂鬱日和。』
発売:2015年3月25日(水)
価格:¥3,000+tax

<収録楽曲>
1 浮遊旋律
2 カラフル。
3parallel love
4I Know
5 Lost Generation
6 こんな世界、知りたくなかった。
7 なきむし。Acoustic ver.
8 Happy Day ~ありがとう、あなたで良かった。~
9 SAKURA-iro
10 ⌘Q
11ごめんね、いいコじゃいられない。
12青色写真
13Hello, Good-bye

■番組情報
沢井美空の「おっとっと日和。」
https://www.showroom-live.com/sawaimiku
次回放送 4/13 時間未定

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる