『アイドル楽曲大賞』アフタートーク(後編)
4人の論客が予測する、2015年のアイドル楽曲とシーン「作り手にはまだまだ頑張ってほしい」
リアルサウンドでも筆者として活躍するピロスエ氏が主宰し、有志によるインターネット投票でアイドル楽曲の順位付けをする企画サイト『アイドル楽曲大賞』について、アイドル専門ライターの岡島紳士氏と、音楽評論家の宗像明将氏に加え、日本各地を飛び回るDD(誰でも大好き)ヲタの中でも突出した活動が目立つガリバー氏を含む4人で行われた座談会の後編。前編【4人のアイドル論客が語る『アイドル楽曲大賞』の始まりと現在地「真の楽曲派は現場に多い」】では、同企画の始まりや、それぞれが2014年のアイドル楽曲・シーンについて思うことを存分に語ってもらった。後編では、2014年のアイドル楽曲に起こった変化や、『アイドル楽曲大賞』を通じて人気が高まったアイドル、2015年流行する楽曲についての予測などを展開した。
「普通にヲタ活をしていたらなかなか出会わないような曲を知ってもらう」(ピロスエ)
ーーイベントでの紹介曲数を前回のTOP30から、TOP20に変更した意図を教えてください。
ピロスエ:20~30位の楽曲って、上位と同アーティストの別楽曲がランクインするだけでそこまで顔ぶれが変わらないことが多いので、今回は20位から紹介するかわりに“登壇者レコメンド”というコーナーを作り、上位には入らないけど2014年を語る上で外せないでしょう!という曲を紹介しました。僕が選んだ3776(みななろ)の「序曲」と、宗像さんが選んだ皮茶パパのおもて梨GALSの「INTERESTING!!」の2曲は、2014年の収穫だったと思っています。
宗像:皮茶パパはどこに出しても外さない感がありますね。
ガリバー:清竜人に近い匂いを感じます(笑)。
ピロスエ:会場に来ていた僕のハロヲタの知り合いなども、皮茶パパの映像を初めて見て「ビックリした」と言っていました(笑)。普通にヲタ活をしていたらなかなか出会わないような曲を、アイドル楽曲大賞を通じて知ってもらうというのが、壁を越えるという意味で意義のあること、そして非常に愉快なことだと、やっていて思います。
ガリバー:皮茶パパは2013年はけっこう都内でイベントをやったりしていましたが、2014年は少し活動が落ち着いたイメージがありました。
宗像:そうですね。物産展などに出ていました。「皮茶パパ音波分析室」が始まって、22世紀を見据えた音楽をやり始めたので、渋谷でイベントということじゃなくなったんでしょう(笑)。皮茶パパは説明が非常に難しいですね。
ガリバー:逆に聴いてもらえれば一目瞭然、という気がします。
宗像:基本的にはサン・ラみたいなもの、と言えばいいのかな?(笑)
ピロスエ:でも「コスプレイヤー」の頃に比べると格段にトラックがカッコ良くなってる。
ガリバー:その頃はアイドル曲を作ろうとしている意志が感じられます。
宗像:アイドル楽曲大賞の前に、笹塚ボウルで皮茶パパのソロライブがあったんです。そのときは呑みドル愛子さんと一緒に非常に難易度の高い音楽をやっていて、すごく盛り上がってました。
岡島:僕はDoll☆Elementsの「君のネガイ叶えたい!」をレコメンドとして挙げました。ももクロの「走れ!」なども手掛けているmichitomoさんが編曲を務めていて、すごく良い曲なんです。彼女たちには、ももクロの「行くぜ!怪盗少女」や「走れ!」をA&Rとして担当して、その後PASSPO☆の「少女飛行」を1位にしたFKDこと福田幹大氏が、おそらく関わっているのではと。
ーー『アイドル楽曲大賞』を通じて人気が高まったアイドルはいますか。
岡島:2010年はももいろクローバーZ(当時はももいろクローバー名義)の『行くぜ!怪盗少女』、2011年は東京女子流の『鼓動の秘密』、2012年はTomato n' Pineがワンツーフィニッシュ(1位「ワナダンス!」、2位「ジングルガール上位時代」)、2013年はAKB48の『恋するフォーチュンクッキー』がそれぞれ1位になりました。Tomato n' Pineは解散した後で、AKB48はすでに売れていましたけど、ここから話題になったり人気が出ることもあります。RYUTistは『アイドル楽曲大賞』を通じてこれまで届かなかった層に名前が広まったと思います。
ガリバー:RYUTistは南波一海さんや嶺脇(育夫。タワーレコード株式会社 代表取締役社長)さんがずっと推していて、名前は知っているけど見る機会が少なかったんですよね。あと、この年に『TOKYO IDOL FESTIVAL』のスマイルガーデンでライブをしたことも大きいと思います。
岡島:耳の早いアイドルヲタがこぞって投票するようなイベントになっているから、結果的に、次に人気の出そうなアイドルが上位に来るような傾向があって面白いと思います。明らかに音が良いグループにはスタッフが優秀だとか、何か理由があるはずなので。偶然だけでこんなことにはなりません。
ガリバー:KOBerrieS♪が初年度以降も上位の常連なのはまさしくその結果だと思います。
岡島:amiinaとかChelipもそうですよね。全然知らない人の方が多いと思うんですけど、ちゃんと票が入る。順位に納得できないという人もいると思うんですけど。テキストだけじゃなく、下位から上位までの曲を実際に順番に聴いていったら、感覚的に納得できるものになっていると思います。