浜端ヨウヘイはオーガスタの系譜をどう継承する？　渾身のバラード『無責任』を多角的に分析

浜端ヨウヘイ『無責任（初回生産限定盤）』

　一方、当サイトでも執筆中のライターの板橋不死子氏は、浜端をこれまでの男性ソロシンガーソングライターと比較してこう語る。

「現在のJ-POP界の男性ソロシンガー枠は、斉藤和義や前野健太のようなロック系、ハナレグミや大橋トリオらのテクニカル派、平井堅や森山直太朗などの正統派という3つの枠で大きく分けることが出来ます。そしてこの男性ソロシンガーを語る上で忘れてはならないのが、オフィスオーガスタというレーベルの存在。オーガスタといえば、山崎まさよしを筆頭に、スキマスイッチ、秦基博、さかいゆうと、業界トップクラスの“歌うま”男性ミュージシャンを抱えるレーベルですよね。ここに所属する人たちは正統派でありながら、ロックも得意、さらにはテクニックもあるという非常に器用なミュージシャンたち。上記の３つのカテゴリにはファンもそれぞれついているわけですが、オーガスタ系のミュージシャンはどのカテゴリからも信頼感が厚い印象です」

　そのうえで浜端ヨウヘイの魅力について、同氏はこう続けた。

「そういう意味で浜端ヨウヘイの歌を聴くと、一聴してオーガスタの直系と感じさせる力がありますよね。耳馴染みがよく、伸びのある声やシンプルだけど心に響く歌詞、バラード（「無責任」）もロックテイスト（「Drivin’on the K」）もこなす器用さ。見た目の朴訥とした男くささもオーガスタらしいなと思いました。ただ、先人と少し違うのはバランス感覚。さっきオーガスタのミュージシャンは器用と言いましたが、器用なりに振れ幅はそれぞれだと思うんです。たとえば山崎まさよしはロック系に近いし、秦はまごうことなき正統派、さかいゆうはテクニシャンですよね。浜端ヨウヘイは情熱的なタイプでありながら、それぞれの要素を同じ割合で持っていて、意外とこれまでいなかったタイプなのかなと思います」

　先輩たちの良い部分を受け継ぐ浜端が生み出した、渾身のバラード「無責任」。このキラーチューンを契機に、彼は男性ソロシーンでも重要な存在になっていくのではないだろうか。

（文＝編集部）