青木優が2015年バンドシーンを読む
LAMP IN TERREN、きのこ帝国、トリプルファイヤー……2015年、期待のバンドまとめ
トリプルファイヤー
ダークホース的なイメージだったトリプルファイヤーだが、去年は意外な方面からリアクションを得ることが多かった。2006年に大学のサークルで結成。昨年、サウンド・プロデュースにPANICSMILEの吉田肇を迎えた2作目の『スキルアップ』を発表した4人組である。「高田馬場のJOY DIVISION」「だらしない54-71」という異名のとおり、ポスト・パンクをベースにした音楽性だ。演奏自体はムダのない、ストイックなものだが、そこに吉田靖直の歌が乗ると異化作用のような感覚が増大する。「次やったら殴る」の、つい笑ってしまう、それでいて逆に攻撃的ですらあるような不可思議なノリ。「スキルアップ」の、シュールさ満載のままアグレッシヴに駆け抜けていく速度感。異端だが、最高にクールである。
2014年は、今泉力哉監督の映画『サッドティー』の音楽を担当。フジテレビの深夜枠『未来ロケット』では「くるくるミュージシャン」として紹介され、同番組のイベントにも出た。ギターの鳥居真道はトクマルシューゴPlusに参加(トクマルは去年最も聴いたアルバムに『スキルアップ』を挙げている)。また吉田は大喜利の才が買われ、この1月2日にOAされたテレビ東京の番組『共感百景』に大森靖子らと出演し、その言葉のセンスで見事、「最優秀共感詩」に輝いている。
とはいえ、特定のシーンに居場所を見出すことなく、あくまで自分たちのスタンスで活動するさまは、集団的な狂騒から距離を置くかのような作品性とつながっている。
Shiggy Jr.
インディ・ポップ・ファンの間での人気者となったShiggy Jr.は、結成からまだ2年しか経っていない。下北沢のmona records周辺を中心に活動をしていたが、昨年はヴォーカルの池田智子がラブリーサマーちゃんとともにtofubeatsの「ディスコの神様」にコーラスで参加し、バンドの名が広く知られることとなった。その後にリリースした『LISTEN TO THE MUSIC』は、池田のキュートなヴォーカルと突き抜けるようなポップ感が鮮やかにブレンドした良作。幅広い層にアピールする可能性を大いに感じるバンドである。