青木優が2015年バンドシーンを読む
LAMP IN TERREN、きのこ帝国、トリプルファイヤー……2015年、期待のバンドまとめ
Awesome City Club
現在の音楽シーンの潮流のひとつであるシティ・ポップ的な空気感を語る際に名前が挙がることが多いバンド。タヒチ80など洋楽バンドとの共演も多く、そちらで知ったリスナーもいるだろう。ただ、シティ・ポップとは言っても、それぞれに活動歴を持つ男女混成のメンバーで結成されており(たとえばベースのマツザカタクミはラップ・ユニットのTHIS IS PANICの中心メンバーだった)、決してスマートなポップネスに収まっていないあたりも特徴。現在はYouTubeへのアップで楽曲を発表するスタンスを続けているが、いずれまとまった形での作品リリースを期待したいところ。このバンドも結成から2年経っていない。
Yogee New Waves
歌もの系のバンドの中でも、とりわけ強い個性を放っているのがヨギーだ。それはヴォーカルの角舘健悟のパーソナリティによるところが大きく、このバンドの歌にはどこか放浪するような心模様が漂っているように感じる。角舘の歌も声も人となりも、そして楽曲自体も、まるで昔のフォーク・シンガーに通じるような自由さを標榜しているかのような感覚があり、その世界がルーツ音楽をしっかり吸収したバンドの音でのびやかに表現されている。この手のアーティストは久しくいなかったので、とりわけ若い世代には新鮮な存在として映るのではないだろうか。そして彼らもまた結成から2年である。
ほかにも気になるバンドはたくさんいる。ヴォーカルのコムアイのキャラクターが人気の水曜日のカンパネラ、昨年のアルバムで注目を浴びたTHIS IS JAPAN。メジャーに進出した組で精力的なのは、永原真夏のパワーが魅力のSEBASTIAN X、ヴォーカル・理姫の艶やかさも最高なアカシック、「ネトカノ」がヒットしたSugar’s Campaign、こちらもシティ・ポップの現代版といえるボールズ、洋楽ロックの影響をダイレクトに展開しているgo!go!vanillasといったところ。HAPPY、The fin.、Homecomings、my letterといったあたりも洋楽色濃厚、さらに言えば、しかもいずれも関西勢だ。
シーン全体としては、パーティー感や爆音で盛り上げるよりも、徐々に歌に比重が傾いていて、その結果、ポップなメロディを唄うバンドが増えている気配を感じる。現在の20代は90年代に隆盛を極めたJ-POPを幼少期から当たり前に浴び、そこから過去の音楽や洋楽に入った人が多いだけに、ポップな歌メロへの抵抗がない。さらに言えば、現代のアイドル文化への偏見も少ないだろう。それに加えて、女の子が重要な役どころを務めているバンドも目につく。そうしてみると、ポップであることがキーワードのひとつになりそうな予感がする、今年以降のバンド・シーンなのである。
■青木優(あおきゆう)
1966年、島根県生まれ。1994年、持ち込みをきっかけに音楽ライター業を開始。現在「テレビブロス」「音楽と人」「WHAT's IN?」「MARQUEE」「オリジナル・コンフィデンス」「ナタリー」などで執筆。