TRICERATOPSはなぜフレッシュなダンス・ロックを奏で続けられるのか?

TRICERATOPS『SONGS FOR THE STARLIGHT』(SPACE SHOWER MUSIC)

 TRICERATOPSが12月10日に約4年ぶりのオリジナル・スタジオ・アルバム『SONGS FOR THE STARLIGHT』をリリースした。特典CDに桜井和寿(Mr.Children)との共作曲「STAND BY ME」が収録されていることでも話題となっているこのアルバムは2012年に結成15周年を迎えたベテラン・バンドでありながら、フレッシュな躍動感に溢れている。ボーカル・ギター、ベース、ドラムという最小限の編成から生み出される彼らの音楽は、なぜファンに愛され続けているのだろうか。

 TRICERATOPSがデビューした1997年における音楽シーンは、小室ファミリーを中心としたJ-POPの最盛期。CD売り上げがピークに達していた時期であり、シングルのミリオン・ヒットが17枚、アルバムのミリオン・ヒットが27枚生まれている。バンド勢を見てもGLAY、Mr.Children、THE YELLOW MONKEYらがメガ・セールスを上げており、歌謡曲もロックバンドも“J-POP”というカテゴライズで世の中に広がっていた。そんな中、水面下では新たな日本のロックの息吹が芽生えだしており、メジャーデビューしたTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやDragon Ashが活躍を始めたのもこの時期だ。そして第1回のフジロックフェスティバルもこの年にスタートしており、CDからライヴへ、現在の音楽シーンへと続く時代の変化の発端となった年だった。

 そんな中TRICERATOPSが発表した「Raspberry」は、今にして思えばデビュー曲でありながらバンドの個性を完全に表現した楽曲だった。王道的ギター・ロックのカッコ良さとシンプルで無駄のないリズム隊が叩きだすソリッドなビート、そして和田唱が描く都会で育った若者ならではの洗練された歌の世界観。さらにJ-POP全盛期にも対抗しうる耳に残るメロディ、それらを60年代~70年代の洋楽ロックを咀嚼したバンド・サウンドで表現した音楽は、新たな邦楽ロックバンドの登場に飢えていたリスナーに待望の存在として受け入れられた。

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