宗像明将が『くるりとチオビタ』を分析

くるりは実験性と大衆性のバランスをどう取ってきたか 『くるりとチオビタ』に見る岸田繁の作家性

 「旅の途中」もまたフォーキーなサウンドだ。2011年の編集盤『ベスト オブ くるり / TOWER OF MUSIC LOVER 2』で初音源化された楽曲。岸田繁のヴォーカルワークも凝っている楽曲だ。「奇跡」は2011年にリリースされた500円のワンコインシングル。エモーショナルな展開を聴かせるミディアム・ナンバーで、高田漣によるペダル・スティール・ギターが光る。この楽曲も『ベスト オブ くるり / TOWER OF MUSIC LOVER 2』に収録されている。

 この『くるりとチオビタ』には収録されていないが、2012年にはチャリティー・シングル「石巻復興節」もリリースされた。東日本大震災後、石川さゆりの依頼で岸田繁が作曲した民謡だ。「東京レレレのレ」からさらに歩を進めた楽曲で、重要曲なので特記しておきたい。

 「o.A.o」は、2012年のアルバム『坩堝の電圧』の先行シングルである『everybody feels the same』のカップリング曲。途中からストリングスが加わり、エレキ・ギターがうなり、さらにコーラスも渦巻いてダイナミックな展開となる。続く「taurus」も『坩堝の電圧』の収録曲だ。

 「ロックンロール・ハネムーン」は、2013年のiTunes限定配信シングル曲。ドリミーなメロディーの楽曲で、サウンドではファンファンのトランペットが大きなアクセントになっている。しかもストリングスやコーラスなども細かいエディットで挿入されており、最後の瞬間に至るまで情報量が異常に多いサウンドだ。2014年には、tofubeatsがリミックスした「ロックンロール・ハネムーン(tofubeats remix)」がiTunseで配信されているほか、オリジナルとリミックスをそれぞれA面とB面に収録したアナログ7インチも発売されている。「ロックンロール・ハネムーン」はアルバム『THE PIER』にも収録。最後の「loveless」もまた『THE PIER』収録曲だ。

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