2ndミニアルバム『幻倶楽部』インタビュー
吉澤嘉代子が語る、“妄想力”を爆発させる方法「自分が生きている世界とは別の世界がある」
「「どうしてなんだろう?」という疑問を持つことが大事かな」
――なるほど。サウンドにおいては、今作は昭和歌謡曲というニュアンスが入りつつ、モダンな演奏を展開しています。そのイメージは最初からあったのでしょうか?
吉澤:はい。「ケケケ」は、最初はソウルっぽいフィーバーしたイメージでした。でも、「悲劇の戦士」という歌詞から、「戦士といえば戦隊モノかな」と思って、そういう音楽を聴いてディレクターやアレンジャーと相談しました。それから「ちょっとちょうだい」は山口百恵さんの『美・サイレント』にインスピレーションを受けた部分があります。歌詞を言わないのがすごく新しいと思って、言葉を用意してあった部分で、口に手を当てて歌ったりしました。
――「ケケケ」は今作の中でも重要な楽曲だと言えますよね。先日公開されたMV(参考記事「吉澤嘉代子、新曲MVでケケケダンス披露 振付けは「ゲラゲラポーのうた」でも話題のラッキィ池田」)でも思い切ったダンスを披露しています。
吉澤:「ケケケ」を作った時期が2年半くらい前で、ちょうど、みんなが当たり前に思うことに対して疑問を持つことが自分の中でブームになっていたんです。その中のひとつとして「ムダ毛」というものをふと考えたことがあって、そこからできた曲ですね。どういうことにしても「どうしてなんだろう?」という疑問を持つことが大事かなと思うんです。もちろん教育されることの中でしか自分の考えを育めないんですけど、大人になったらそれにプラスして自分で吸収していかないと、と考えた時期に作った曲です。
――物事に対して、ひとつのイメージだけではなく、いろいろなものを見せたいという気持ちがあると?
吉澤:ありますね。そういうことで「ブレてる」とか「芯がない」と言われることもありますけど、私がやりたいことは自分のイメージを固定して売っていくことじゃなくて、自分の言葉で曲の世界を表現して、聴いてくれている方にそれを疑似体験して楽しんでもらうことなんです。私と曲をつなぐ一番大切なものは言葉なので、それが納得のいくものであればどんなサウンドや表現になっていても、私には違和感はなくて、ひとつの引き出しだと思っています。
――確かに吉澤さんの楽曲は、言葉が重要なポイントですよね。
吉澤:曲の中で、人からすればそれが悲しい結末だったとしても、自分の中で「どうハッピーエンドなのか」ということをよく考えます。ハッピーエンドは自分が決めるものだと思っているので、主人公にとって望むべき姿なら、それがハッピーエンドです。それでいてその主人公の成長を描いているつもりです。例えば「がらんどう」は、恋を手放す話ですけど、人の手によってではなくて、自分自身で自分を満たすという結末が主人公の女の子の自立につながると思っています。形としてはラブソングではありますけど、人生の成長の話でもあるんです。
――「邪魔になるなら心ごと 壊してしまいたかった 思い出もぜんぶね」というハッとさせる歌詞や、「許されないのなら いっそ あなたの恋人に抱かれたいと思った」というような想像を掻き立てる歌詞は、激情を肯定するようなスタンスを感じさせます。
吉澤:肯定してますね。自分に嘘をつけなくなっていく、というところに向かっています。
――続く「恋愛倶楽部」にはどんな思いを込めているのでしょうか?
吉澤:「倶楽部」という当て字の漢字が好きで、タイトルに使いたかったんです。「恋愛倶楽部」というタイトル自体は最初は嫌だったんですけど、それは自分が「恋」に拒否反応をしているからなんだろうな、と思って、学校非公認のクラブに入る女の子の物語にしました。「恋愛倶楽部」ですから、普通に恋愛する話にはしたくなかったので、「思春期にとっての恋愛ってなんだろう?」と自分の子供の頃の気持ちを思い出しながら考えて。その頃の恋愛って、もちろん成就に向かってグツグツ煮えるんですけど、実際に恋が叶ってしまうと相手のことが気持ち悪くなってしまったりすることもあって。この曲にはそういう残酷さを出したいと思いました。そういう気持ちって懐かしいものでもあるし、憧れでもあります。こんなクラブがあったら楽しかっただろうなと思いますね。