吉澤嘉代子がラブリーポップに仕込んだ“棘”とは?「私の曲はほとんどが妄想から生まれます」

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 期待のシンガーソングライター吉澤嘉代子が5月14日、メジャーデビューとなるアルバム『変身少女』をリリースする。彼女は2010年11月にヤマハ主催のコンテスト“The 4th Music Revolution”JAPAN FINALに出場し、グランプリとオーディエンス賞をダブル受賞。2013年6月にはインディーズでミニアルバム『魔女図鑑』をリリースし、ファンタジー的でありつつ棘を秘めたポップワールドで注目を集めていた。そんな彼女が「ラブリーポップス」とテーマを掲げて作り上げたのが本作『変身少女』。一枚ごとに変化していくという作品コンセプトから、音楽的ルーツ、目指すアーティスト像までじっくりと語った。

「現実に則したラブソングを歌うことに抵抗があるんです」

――メジャーデビューとなるアルバム『変身少女』は、吉澤さん独自の歌詞の世界と60年代ポップスのムードがミックスされた仕上がりですね。まず、どんなものを作ろうと?

吉澤嘉代子(以下 吉澤):インディーズで出した前作の『魔女図鑑』は、吉澤嘉代子のカタログになるような選曲…私が絶対に出したいと思う6曲を選びました。今回はメジャーデビューアルバムなので、これからの音楽人生にレールを敷くような、窓口になる作品にしたいと考えて作りました。そう考えたときに、前作で受け入れやすかった「未成年の主張」「らりるれりん」のようなラブリーポップスが、今の私を世の中に位置づける上で一番の武器になる部分だと思ったので、ラブリーポップスな楽曲で選曲しました。コンセプトがはっきりしたシンプルで濃厚なアルバムになっていると思います。

――吉澤さんにとっての「ラブリーポップス」とは?

吉澤:4年半くらい前に今のディレクターさんと出会ったんですけど、ディレクターさんから「大瀧詠一さんっぽい」って言われたんです。そのときには大瀧詠一さんのことを詳しく知らなかったんですけど、じっくりと聴いてみたらすごく良かった。それから、松本隆さんの歌詞も好きになりました。そこからフィル・スペクターなどで知られる60年代のニューヨークのブリル・ビルディング・サウンドを聴くようになりました。シンガー・ソングライターではなく、職業作家の人々が作った洗練されたポップスが、私にとってのラブリーポップスですね。

――たしかに今度の作品のサウンドは、フィル・スペクターが手がけたロネッツなどのガールズグループのキラキラしたサウンドに通じるところがありますね。

吉澤:あまり生々しいものが好きじゃなくて、どこか現実離れしたようなもの、夢と現実の境のようなものが好きです。だから私にはちょうど良かったのかな。

――「美少女」は‹もしも美少女だったら›という歌詞に表れているように、ファンタジーの部分とリアリティが共存しているような印象を受けます。歌詞についてはどんなコンセプトをお持ちですか?

吉澤:『美少女』は自分自身に近い曲でありながら、ラブリーポップスというハイブリッドな曲に仕上がったと思っていますね。この曲に関しては、「恋」というワードを入れることでラブソングに聞こえるんですけど、実は恋をする前の歌で、「恋がしたい」というのは、恋愛だけじゃなくて仕事でも趣味でも、「このものと出会うために生まれてきたんだ」と思えるくらい夢中になれるものを見つけたいという気持ちを込めた曲です。だからラブソングという枠組みを取りながら、自分のやりたい言葉遊びや気持ちを隙間に詰め込んで作った曲になっています。私の曲にはそういう曲が多いんですけど、自分が体験した現実ではない、ほとんどが妄想から生まれたフィクションです。私自身、現実に則したラブソングを歌うことに抵抗があるんですよね…。

――ラブソングを作ることに抵抗があるのはなぜですか?

吉澤:なぜでしょうね、恥ずかしいからでしょうか。ラブソングという形の方が、聴く人に受け入れてもらいやすいと思いますし、私の曲をとにかく聴いてほしいというか。だからラブソングを歌うために苦し紛れに編み出した方法が、歪んだ部分を入れることだったり、飛び道具的な言葉を入れたりすることで、どこかひねらないと自分でバランスが取れなくて、今のスタイルができました。

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