ソウル・フラワー・ユニオン中川敬、3年10ヶ月ぶり新作『アンダーグラウンド・レイルロード』を語る

「歌詞とサウンドがいい関係性になるのがより重要」

――やりたいことは全部ソウル・フラワー・ユニオンに詰め込んでたから。

中川:まさにそう。自分のアコースティック・アルバムにはドラムもエレキ・ギターも入れないでおこうと思ってるから。で、当然、ドラムなりエレキ・ギターなりキーボードなりを使う形で展開させたいラウドな表現もあるからね。それはソウル・フラワー・ユニオンでやる。分かりやすい。そういう意味で今作はいつもより純化してるかもね。

――だから今回まさに「パンク芸」というか「ソウル・パンク」というかね。

中川:(笑)。

――これはニューエスト・モデルか、みたいな。そういう初期の中川君たちにあったようなエネルギーと勢いを感じました。

中川:『ワタツミ・ヤマツミ』(1994年)を思い出したよね、作ってる時に。例えばニューエスト・モデルの頃(1985~1993年)は、バンド技量的に、俺個人のルーツ・ミュージックをやれなかったようなところがあった。そこから逆に独特なセンスのバンドになっていった。コード進行は複雑やし、やたらテンポが速いし、転調しまくるし、キーの設定も高い。でも『ワタツミ・ヤマツミ』の頃に、俺が10代の頃に聴いてた音楽をようやく咀嚼してできるようになり始めたわけ。ファンキーなサイケデリック・ソウルやね。で、こないだソニー時代のアルバムのボックス・セットを出した時に改めてマスタリング・ルームで『ワタツミ・ヤマツミ』をじっくりと聴いたんやけど、確かに一曲一曲の独自性・変態性は際立ってるんやけど、実は中川敬的なオーソドックスなロック・アルバムやなあと思ってね。今回はその時の感触に近い。だから、一周回った感はあったかな。

――ただ、単なる原点回帰ではなく、その時のバンドのエネルギーと今回感じられるエネルギーは違うものだと思います。今回のエネルギーはどこから来ていると思いますか。

中川:”怒り”やね。ANGER IS AN ENERGY。ツイッターなんかをやってると、よく毎日これだけ腹の立つニュースばっかりやってくるなと。連日世界中からやってくる子供の受難のニュースに怒り狂う日々。まあ、呑気なレイドバックしたロック・アルバムとか作る気分にはならないよね、中川敬の場合(笑)。エレキ・ギターってやつを持って、ガツンとやらなあかんという気持ちが以前より強くなったのかも(笑)。

――3.11以降にそういう問題が顕在化したわけですよね。

中川:全部それ以前からある問題やねんけどね。でも3.11以降のショック・ドクトリン的な流れは異常でしょ。

――それで日々怒りが募り、ロックでパンクな中川敬が出現したと。

中川:まあ、そういうことでもいい(笑)。ソウル・フラワー・ユニオンのライヴっていうのは、お客さんと一体化して一緒に声を上げられる特殊な場所っていうかね。なかなか日常生活にはないでしょ。自分はずっとこういうことをやってきて、その結果、すごく貴重な場所にいると思うんよね。

――声があげられる場所にいるんだから、声をあげなきゃいけない。

中川:そう。あと、反原発運動とかヘイトスピーチのカウンターとかにいくと、20代30代の若い人が多くて、そういう連中が発する怒号と、ソウル・フラワー・ユニオンが打ち鳴らすサウンドないしリズムが地続きなところもあるね、自分の中で。

――そのわりに歌詞はそれほどストレートなプロテストじゃないですよね。

中川:ああ、そうかも。ただ、もともとストレートなメッセージ・ソングって「極東戦線異状なし!?」とか「NOと言える男」「パレスチナ」とかぐらいじゃない? 基本的に俺の場合、曲の作り方はメロディが先で、次にそのメロディを引き立たせるコード進行を考え、だいたいのアレンジの方向性を決めて、それからバンド・メンバーのところに持っていくというスタイル。特に奥野あたりは色々アレンジのアイディアを出してくるからそれでまた変化していく。で、そのころにようやく歌詞を完成させるぐらいの順番やからね。だから基本的には一曲一曲、いい曲にしたいなということに過ぎない。響き、アレンジ、グルーヴ、もちろん歌詞も含めて、いい曲を作る。特に歌詞とサウンドがいい関係性になるのがより重要。

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