『アンダーグラウンド・レイルロード』リリースインタビュー
ソウル・フラワー・ユニオン中川敬、3年10ヶ月ぶり新作『アンダーグラウンド・レイルロード』を語る
「ソウル・フラワー・ユニオンの第2章の始まり」
――今回はそのサウンド面が充実してますね。ゲストがいっぱい参加してて、音数も多いんだけど、そのわりに、厚ぼったくならず聴きやすい音に仕上がっている。これは結構重要な気がします。
中川:気がついたらゲストがこんなことになってて…(笑)。だから今回はミックスの時にけっこう音を省いたよ。今までもそういうことがあってね。レコーディングからすぐミックスに突入して、そのテンションのままでやって。ちょっと時間を置いてミックスをやれば音を抜いたやろうけど、あとで聴いてびっくりするもんね。”なんでこんなに一杯音入ってるんや…”って(笑)”いらんやん、このギターのリヴァース…”みたいな(笑)。
――でもその過剰さがソウル・フラワー・ユニオンの持ち味でもある(笑)。
中川:いやいや、まあ…とりあえずまずは入れちゃうねんね、なんか(笑)。だから今回は今までの作品の中でもミックスを一番じっくりやったかな。録りからミックスまで、2か月ぐらい時間があったから、今までとはちょっと違うやり方で。7月に数日間東京のスタジオでミックスをやって、8月にまた数日間やったんやけど、その間はエンジニアの笹原(与志一)が自宅でちょこちょこいじって。自宅やから微調整しかできないんやけど、それを毎日データで送ってもらって、メールでいろいろ意見を交わしながら一ヶ月間じっくりとやりとりをしたんよね。大概は10日ぐらいスタジオを押さえて一気にやるんやけど、今回はあえてそういうやり方をしてみた。
――そっちのやり方の方が正解じゃないですか。
中川:うん。かなり客観的に冷静にミックスに当たれたから、このやり方がベストやなと。マスタリングはいつもお願いしてる小鐵(徹)さんにお願いして、しっかり納得いくまでやったし。だから今回はすごい満足してるよ。
――だんだん自分たちなりのベストなやり方が掴めてきた。
中川:長年これだけ沢山の作品を作ってるとね。昔みたいにお金はかけられないけど、自分らの置かれてる状況に即した良い作品を作っていけばいい。まあそれも、エンジニアやスタッフ、周りの協力があってこその話やけどね。今、制作費がなくて、エンジニアもバンドがやって、マスタリングも友達がやるみたいなノリでやってるCDがいっぱいあるやん。実際そういう作品を聴いて、俺は不満やねんね。もうちょっと詰めようや、っていう。もっといい作品を作ってほしいし、できるはずやのに。プロのエンジニアの手が加わるかどうかで仕上がりに大きな差が出るからね。ウチは、エンジニアの笹原(与志一)の力が大きいよ。
――なるほど。そういう意味も含め、今作はソウル・フラワーにとって転機となる作品であり、今後の活動のベースとなる作品という気がします。
中川:最高傑作。ソウル・フラワー・ユニオンの第2章の始まりというか。
――キャリア30年にして、まだ第2章ですか(笑)。
中川:そう。ビートルズで言えば『ラバー・ソウル』ぐらい。
――それはちょっと図々しいな(笑)。
中川:ストーンズでいうと『ベガーズ・バンケット』。
――はははは!これから成熟に向かうと。
中川:そうそう。ようやく大人になり始めたので、今後ともよろしくお願いいたします(笑)。
(取材・文=小野島 大)
■リリース情報
『アンダーグラウンド・レイルロード』
発売:10月8日(水)
価格:3000円+税
<CD収録内容>
1. グラウンド・ゼロ
2. 風狂番外地
3. 地下鉄道の少年
4. 残響の横丁
5. マーマレードの甘い風
6. 燃やされた詩集
7. アップセッティング・リズム
8. バクテリア・ロック
9. 福は内 鬼も内
10. マレビトこぞりて
11. これが自由というものか
12. 必要なことはカラダに書いてある
13. 踊れ!踊らされる前に
14. 世界はお前を待っている