Eテレ『サブカルチャー史』でゼロ年代を分析 宮沢章夫「逸脱の表現がサブカルチャー」

 宮沢は、サブカルチャーのキーワードとして「逸脱」という概念を挙げ、吉見俊哉と北田暁大による編著『路上のエスノグラフィ』を引用。サブカルチャーによる「支配への抵抗」だったはずのロックやレゲエが、いまでは「消費の対象」になっているが、「支配層」によって「逸脱」のレッテルを貼られた者による表現自体は数多く存在している、という趣旨を説明した。また、今までの方法では表現できないものを、逸脱することによって表現するのがサブカルチャーの本質だと持論を展開、昨今における様々な例を挙げた。

 その一つとして挙げられたのは、地方でのヒップホップの流行だ。都築響一による『ヒップホップの詩人たち』には、富田克也監督の映画『サウダーヂ』で主演を務めた山梨のラッパー・田我流の言葉も記録されている。宮沢は「ラップがこんなに日本の地方で歌われているのは、地方が寂れているという現実があるから。気付いたら自分が逸脱した道を歩かなければいけなかったというのが共時的にこれらの作品には流れている」と、紹介した数々の作品の共通項を延べた。

 また、現在「COOL JAPAN」と称し、国の政策として積極的にサブカルチャーを輸出しようとしていることに対しては「官だからこそ発信できるものがあると思うけど、それがサブカルチャーそのものとかみ合うかというと、わからない」と指摘。サブカルチャーという言葉を使わず、まずはオタク文化として発信していくことを提唱した。

 番組の最後に宮沢は「インターネットでどこの情報でも見れるようになった現代、もしかしたら新しいサブカルチャーが生まれるのは、どこかの街ではなくて、ネット空間なのかもしれない。(中略)その中心はGoogleなのかもしれない。だから検索で上位に出てきたものだけを見ていてはいけない、それが全てではない。一番下にあるものこそ、新しいサブカルチャーかもしれないのだから」と、これからのサブカルチャーの方向性を示唆した。

 全10回に渡り、日本の戦後サブカルチャー史を追ってきた同番組。その年表は下記サイトで確認可能だ。
サブカルチャー年表 - ニッポン戦後サブカルチャー史/NHK

(文=向原康太)

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