デビューアルバム『Black Cranberry』インタビュー
JAZEE MINORが語る、ラップにおける日本語の強み「シンプルな音のとり方をするとハマる」
「NYでラップして、日本語の可能性に気付いた」
――高校卒業後は単身渡米し、NYで暮らしていたそうですね。
JM:6〜7年前、1年だけ住んでいました。向こうでライブもしたし、クラブにも沢山遊びにいったし、それこそブルックリンのレゲエ色の強いクラブに行ったりもした。けっこう濃い一年を過ごせたと思います。ライブをする時は、自己紹介だけ英語にして、リリックは全部日本語でやってました。英語もあんまりわからないし、拙い英語で勝負しても話にならないかなと思って。逆に、オーディエンスにとってわからない言語でも、フロウで勝負すれば何かしら伝わる可能性はある。実際「何言ってるかわからないけどお前ヤバいね」みたいな感じで声かけてもらったりして、日本語の可能性に気付きました。NYに行く前は英語のラップにものすごい憧れがあったんですけど、日本語ラップには日本語ラップなりの良さがあるんですよね。ちょうどその頃は、日本でもSEEDAくんとかが日本語しか使わなくなっていったタイミングで、バイリンガルのラッパーたちも日本語ならではの表現を意識していた時期でしたね。2006〜2008年くらいだったと思います。
――ラップにおける日本語の強みって、具体的にはどんなところだと思いますか。
JM:まず、音が綺麗だなってすごい思いますね。メロディにした時もすっと耳に入る語感で、英語よりも音節がはっきりしているというか。英語だと細かく小さな音が入りますが、日本語はひとつひとつの音がクリアーで、シンプルな音の取り方をするとすごくハマる。たとえばビートが早い曲に日本語はすごくハメやすいんですね。そういう風に音の取り方を意識すると、日本語の良さが映えるんじゃないかと思います。
――NYに行って、日本のクラブミュージックシーンとはどんな違いを感じました?
JM:当たり前のことなんですけど、向こうは普段しゃべっている言葉の音楽がクラブミュージックになっていて、オリコンチャートで流行っている曲がクラブでかかる、みたいな感覚なんですね。日本で言うとミスチルとかをクラブでかけて、みんなで大合唱しているみたいなイメージ。だから盛り上がりやすいというのはありますね。ヒップホップがメインストリームの文化として根付いているんです。そういう意味で一番びっくりしたのは、コインランドリーで洗濯していたらおばあちゃんにフリースタイルを吹っかけられたことですね(笑)。「なんだお前のその格好は、ラップしてんのか」みたいな感じで。日本だとヒップホップは自分から探さないと見つからないものだけど、向こうだと自然にそれがある、という感じなんだと思います。その違いは大きいんじゃないかな。
――逆に、海外から見た日本のクラブの良さってありますか?
JM:あまり怖がらずに遊びにいけるところかな。一昔前は怪獣みたいなとんでもない人も多かったけど、最近はみんなお洒落に遊んでいる感じで、行きやすい空間になっていると思います。逆に海外のクラブは、まだ怖いところが多いんじゃないかと。自分がNYに行った時は少し危ない時期で、一度銃撃戦に巻き込まれそうになったことがあります。ブルックリンの箱でノトーリアス・B.I.G.の10周忌追悼イベントか何かあって、友達と遊びに行ったんですけど、行ってみたら黒人しかいなくて。並んでいる最中も女の子とかに「今日はアジア人いらないっしょ!」って歌われたりして、超アウェーでした。でも、中に入ったら案外みんな気さくに話しかけてくれたりして、来て良かったなぁ、なんて思ってたんですよ。そしたら途中からフロアで乱闘が起こって、みんな逃げ惑い始めたんですね。で、バンバンバン!って銃声が。翌日、ニュースを観たら、私服警官とギャングが打ち合っていたそうで、結局何人か死んだって言ってました。でも、その一週間後にはそのクラブが普通に営業再開していて、なんていうか……タフだなって思いましたね。日本のクラブはそういう意味でいうと、ぜんぜん綺麗に遊べるところだと思います。