チェコ、新作『MANTLE』の音楽的冒険を語る「ドラムとベースの鳴りが今までとは違う」

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「サウンドは明るいワンパクな俺、歌詞は薄汚れた俺なんです(笑)」(武井)

――また、今回のアルバムはある意味で、日本語ポップスの伝統の中に位置づけることも出来るのではないでしょうか。私は1970年代の加藤和彦の作品に通じるものを感じましたが、いつも思い浮かべるような日本の音楽はありますか。

武井:あんまり日本のものを意識したことはないんですけど、ブルーハーツやスピッツがめちゃくちゃ好きなんです。洋楽を聴く方が多いとは思うんですが、根っこの部分には彼らの音楽が存在しています。

――当時のブルーハーツは歌謡曲的な要素もあって、「こんなメロディ歌っちゃうんだ」というような感覚はリアルタイムで見ていてすごく新鮮でした。そういったメロディセンスというのが武井さんの中にもあるような気がします。

武井:それはうれしいです。

砂川:ご年配の方に「メロディがいい」と言ってもらえることもあったりするので、日本人が歌いやすいメロディなのかも知れません。

――先ほど、ライブをやるなかでお客さんが求めているものを感じ取って、このアルバムにも反映されているというお話でしたが、リスナーが求めているチェコの音楽とは何だと思います?

砂川:武井さんの作るサウンドや歌詞の世界観はキャッチーなんですけど、普遍的なJ-POPになりすぎないところがあるので、その部分かなと思います。USインディーの系譜を受けているけど、歌はキャッチーで、ぱっと聴いてすぐ歌えたり、アグレッシブに体が動くようなリズムだったり。そういうものを作るのが絶妙に上手いんですよ。

――キャッチーだけど一癖あって、一筋縄でいかないもの。そんな武井さんの個性が曲に出ているという感じでしょうか。歌詞にはアイロニーを含んだものも多いですね。

武井:ドラムの正太郎(山崎)とは付き合いが長いんですが、彼と飲んでいる時に、「昔はすごい明るかったけど、周りに影響されてどんどんシュールに捻くれていっている」ということに気付いたんです(笑)。どんどんマイノリティな笑いを追求している自分がいて。根っこの明るい性格はサウンドに繋がっていて、歌詞は後付の性格が表れているんだと気付きました。サウンドは明るいワンパクな俺、歌詞は薄汚れた俺なんですよ(笑)。

――その二面性がチェコだと。面白いですね。

武井:悶々としていた時期があったからかもしれません。細かいことがいろいろあって、ライブのセットリストもしばらく変えられなかったり…。『NEVERLAND』に全然入ってなかった5人用の曲をライブで聴いてCDを買ってくれた人が「タカハシマイが全然歌ってないじゃん。詐欺だ!」って言ってるのを知ったり。そんなこと言われても困るんだけど(笑)。そんなことがあったので「お前に言われたくない」という気持ちが高まって、「俺がチェコなんだから、お前より俺の方が分かっている」っていう感情が籠っているのかもしれません。

――タカハシマイさんの存在はバンドにとっても大きいということですね。彼女の加入がチェコにもたらしたものとは?

武井:俺は今回、タカハシの歌を楽器と捉えて曲を作っていました。楽器ができる訳ではないのに彼女をバンドに入れたのは、歌ってもらうことで一番パワーを発揮すると思ったからです。個人的には、1曲をまるまる歌ってもらうより、曲中でスイッチすることがバンドのオリジナリティを出せていいのかもしれないなと考えたりしています。

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