「日本の音楽の“方程式”を超えたい」チェコ・ノー・リパブリックが目指す、世界標準のポップ

Czecho No Republic
2010年に結成されたCzecho No Republic (チェコ・ノー・リパブリック)。メンバーは左から、八木類(G/Cho/Syn)、砂川一黄(G)、武井優心(Vo/B)、タカハシマイ(Cho/Syn/G/Per)、山崎正太郎(Dr)の5人。

 USインディーズを思わせる乾いたサウンドと、抜けの良いポップセンスで評価急上昇中のチェコ・ノー・リパブリック。今年1月に5人組となった彼らが、10月30日にメジャーデビューアルバム『ネバーランド』をリリースする。新たに加入したタカハシマイのコーラスも心地良い本作は、インディーズ時代から培ってきたチェコ流ポップソングの集大成ともいえる内容に仕上がっている。かなり洋楽志向の強いサウンドであるが、彼らは“歌モノありき”の日本の音楽シーンで、自分たちの音楽世界をどうアピールしていくのか。作詞作曲を手がける武井優心(Vo,B)と、今年1月に正式加入した砂川一黄(G)に話を聞いた。

――10月30日に出るメジャーデビューアルバム『ネバーランド』を聴きました。USインディーズにも通じるドライな明るさがあって、かなりサウンドに重きを置いた作品ですね。歌モノ志向の強い日本のシーンでは異色だと思いますが――。

武井優心(Vo,B):歌を真ん中に置いてガッツリと歌い上げるのは、自分としては恥ずかしくなってしまうところがあります。僕自身の声が曲にガチっと合っていたらいいんですけれど、そうじゃないのに歌い上げるのはやめようと。「似合うこと、身の丈に合うことをやる」というのがバンドを最初に組んだときのテーマでもあったので、洋楽が好きでバンドを始めた僕らの“身の丈”が、今度のアルバムにも出ていると思います。ただ、歌自体はポップだし、日本語でやっているので、みんなも嫌いではないだろうと。きっと「食べたらおいしかった」ということもあるんじゃないか、と思って作りました。

砂川一黄(G):ガッツリと歌い上げたり、サビでグッと入る、みたいな曲は、たぶん僕らの柄じゃないと思うんです。楽しく音楽やりたい、という等身大の気持ちが詰まっていて、背伸びしてないし、あざとくはない。そういうところがリスナーに伝わったらいいと思います。

――洋楽好きらしいサウンド志向を保ちつつ、独自のポップさを上手く引き出した作品のように思いますが、メジャーデビューにあたっての戦略、自分たちをアピールする、というところをどう考えていますか。

武井:そこはなかなか難しいですね。対バンして合うバンドがなかなかいないし、いたとしてもメジャーで売れたいと思っていないバンドだったりして(笑)。もちろん、いわゆる日本のロック雑誌に出てくるようなアーティストを好きな人たちにも聴いてもらいたいけど、曲を作り出すとピュアな気持ちで楽しく作っちゃうから、なかなか狙って作れないんです。曲を作っているときはノープラン。みんながそれを気に入ってくれたら嬉しいな、と。

――最近は老舗の洋楽雑誌が休刊になるなど、洋楽ユーザーは減ってきていて、日本のリスナーはよりドメスティックな音楽を好む傾向にあるようにも思えます。それはそれで面白いですけど、洋楽好きとしてはどうでしょうか。

武井:日本の音楽も好きなんですけど、洋楽のサウンドはいろいろ遊びが効いていて、やっぱり面白いなって思うんですよね。

砂川:決して悪い意味だけではないですけれど、日本って「『イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ 最後にもう一回サビ サビは4つ打ちで盛り上がる感じで』みたいな方程式があるじゃないですか。

武井:その方程式じゃないと篩にもかからない、という。

砂川:決まったルールの中で新しいことをやっている、という風に感じてしまうことが多いですね。そこを飛び越えた新しいものってあんまりない、というか。

――チェコはそうしたルールを超えてやってやろう、と?

武井:もちろん「やってやる!」という気持ちはあります。ただ、暗示的に「これはいいものだから」と言わないと、届かない時代でもある気がするんですね。ピュアに曲を聴いてもらえたら届くとは思いますけれど、少々不安なところで(笑)。

砂川:僕はその点、チェコにはお茶の間のおばちゃんでも口ずさめるポップさがあるような気がする。絶妙な位置をついているかな、とは思っています。

――今回のアルバムもその点では作り切った、という感触ですか?

武井:そうですね。ポップな部分は全部詰まっています。今回のアルバムはかなりポップに寄せたので暗い曲もない。……実はバンドをやっていくうちに若干好みも変わってきて、そうでないもの、色で言えば原色だけじゃなく、くすんだ色も好きになってきているけど、今回はポップで作り切りましたね。

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