柴那典「フェス文化論」第5回

オーラル、ゲス乙女、キュウソ……“先行指標”から見えた、今年の夏フェスのブレイク候補とは?

 7月16日にシングル『起死回生STORY』でメジャーデビューを果たす彼ら。その魅力は、切れ味鋭いリフの応酬が生み出すハイテンションな曲調。代表曲「大魔王参上」「Mr.ファントム」を筆頭に、高速BPMの四つ打ちダンスロックのスタイルを得意にしている。ボーカル山中拓也(Vo/Gt)のワイルドなカリスマ性もあるが、人気の理由は、やはり汗が飛び散るような熱いライブパフォーマンス。ROCK IN JAPANやSWEET LOVE SHOWERなどのフェス出演も決まっている

THE ORAL CIGARETTES / 大魔王参上 【2013.4.21 Livemasters CHOICE × HighApps 】

 先日に行われたライブイベント「HighApps Vol.19」で彼らのステージを観たのだが、山中のMCによると、やはりメトロックの「NEW BEAT SQUARE」への出演で手応えを掴んだそうだ。

 また、今夏の台風の目になりそうなのがゲスの極み乙女。だ。4月にメジャーデビューを果たした彼らは、メトロックでもライブ開始前からかなりの人が集まり、入場規制を記録。去年から注目度を高めてきたバンドの勢いを証明した形となった。彼らも四つ打ちのダンスロックのスタイルで評判を集めたバンドだが、それだけに終わらない独自の音楽的発想を盛り込むセンスが抜きん出ている。

ゲスの極み乙女。「ノーマルアタマ」

 また、シニカルな毒とユーモアに満ちた言葉のセンスと、バンドのスタンスが支持を集めているのが、関西出身の5人組キュウソネコカミ。彼らもMETROCKで入場規制となった。

キュウソネコカミ「ビビった」

 また、やはり入場規制を記録したのがグッドモーニングアメリカ。メジャーデビュー前の2010年から続けてきたコンピレーション・シリーズ『あっ、良い音楽ここにあります。』などの企画を通じて、今のシーンの活況の礎を作ってきたバンドでもある。

グッドモーニングアメリカ「拝啓、ツラツストラ」

 THE ORAL CIGARETTESもステージは相当盛り上がったよう。これらのバンドたちのような、畳み掛けるような高速のビート、癖のある言葉のセンス、覚えやすいメロディーを武器にした新世代バンドたちが次々と台頭しているのが、2014年のロックシーンの風景だ。METROCKには出演していなかったが、5月にメジャーデビューアルバムをリリースしたKEYTALKもブレイク候補の筆頭格に挙げられる。

KEYTALK「パラレル」

 今年の夏フェスは「新世代高速四つ打ちダンスロックバンド」の百花繚乱の風景が展
開されそうだ。果たして、勝ち抜けるのは誰になるか。注目したい。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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